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「耳が、聞こえないの!何もわからないわ」
スポットライトの下で台本片手に芝居に入る。
「あの人に会いたいの、早く会いたい」
俺は、声だけだが必死に女っぽく演じる。
「ちょっと、タンマ。直樹お前…もうちょっと焦った感じで言って。急に耳聞こえなくなってあんま焦らねぇ人はいねぇだろ」
部長に指摘され、うっと呻く。
「んんー、どんなのかわからないです。」
「じゃあ耳栓したら?なんも聞こえなくなるよ?」
雅也がどこからかワインのコルクみたいなものを二つ持ってきた。
「うーん、効果あんのかな」
俺はそれを受け取り耳にはめ、きゅっきゅと定位置に収める。
「わ、ホントだ聞こえない…」
「本当に聞こえないの?後で貸してな!」
きゃっきゃとはしゃぐ雅也の声は聞こえなかった。
確かに、何も聞こえないと怖い。
誰が何言ってるのとかわからないし
特に声色で人の喜怒哀楽がわからない。
「怖い、ですね」
「だろうな、今の状態でもう一回スタート」
「 耳が…っ…、聞こえないの!何も…何も…わからないわ」
自分の声もわからない。
「 あの人に…っ、会いたいの、…早く…会いたい !」
「はい、ストップ!すげぇ良くなった!さすが直樹!だけど耳栓してるからちょっとばかし声が小さいかな。はい、今日はここまでな!みんなお疲れ様!」
部長がいいところで切り出すと、部員のメンバーは終わったーっと背伸びをする。
俺は周りの空気から終わった事を察して
耳栓を抜いた。
「あ、音復活した」
「すごいよ直樹!めっちゃ上手かった!本当に聞こえないと不安なんだな!」
キラキラとした目で興奮したようにはしゃぐ雅也に俺はハイハイと言って押し抜けた。
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