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出会い
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次の日、仕事が休みの露朱は店の中庭にいた。
この中庭は時間帯によっては店の男娼たちで大変賑わっている。
しかしまだ時間が早いのか、露朱以外だれもいなかった。
最近はほとんど客を取っておらず、露朱の生活時間が下子と同じになっている。
そのため他の男娼よりも早起きになっていた。
白椿では、上子も下子も外出は禁じられていないため、休日に店の外へ出かける者も多い。
しかし露朱はほとんど店の外へ出たことがなく、休日は自室かこの中庭でぼんやりとしていることが多かった。
中庭に面した軒下で、ぼんやりと秋の色を見せる庭を眺める。その時ふと視線を感じた。
顔を上げて辺りを見回す。
少しして、壁の隙間からこちらを覗く人影を発見した。
中庭を囲む壁には意図的にいくつかの隙間が開けてある。
そこは店の外に繋がっていて、道行く人々が中庭を覗いて好みの男娼を探すことができる場所だった。
ただし、そこで外の人々と男娼が会話をすることは禁じられている。
露朱はゆっくりと立ちあがり、人影の方へと歩みだした。
隙間の向こうの人物は、覗きが見つかり身を固くしている。
壁の隙間の目の前まで来ると、露朱は立ち止まった。
そこにいたのは露朱よりも少し背の高い青年だった。
店に来る客層と比べるとかなり若く見える。露朱よりも年下にすら見えた。
青年は真っ赤な顔で露朱を見つめている。
露朱は軽く周囲を見回してだれもいないことを確かめると、小さな声で囁いた。
「ぼく、この店で男娼してる露朱っていうんだ。もしよかったら買いにきてね」
それは禁じられた行為であったが、露朱は話かけずにはいられなかった。
この青年が自分を気に入ってくれたことが一目で分かったからだ。
久しぶりに上子として働くことができるかもしれない。チャンスを逃さない手はなかった。
「ここで話したことは内緒にしてね。本当は覗いてる人と話しちゃいけないんだ」
青年は赤い顔のままで何度もうなづいている。
壊れたおもちゃのように首を縦に振る青年を見て、露朱は微笑んだ。
彼の笑顔は男娼としてのそれだったが、青年はたまらない様子で両手で口を押さえている。
それを見て露朱は思わず吹き出した。
先程の妖艶なものとは違う自然な笑顔に、青年は改めて見とれている。
「待ってるね」
背後に青年の視線を感じたまま、露朱はその場をあとにした。
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