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口付け
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露朱は、寝具の敷き布を握りしめて白くなった筑紫の手に自分のそれをそっと重ねた。
筑紫がはっと顔をあげると、露朱は彼の顔を覗きこんだ。
「じゃあ手を繋いだことは?」
露朱がそう問うと、筑紫は赤い顔を横に振った。
「それじゃあ、キスも?」
さらに顔を近づけて問いかける。返事ができず、首を振ることもできず小さく震える筑紫を露朱はそのまま寝具の上に押し倒した。
「あ……あの……」
押し倒された筑紫は何事かを露朱に伝えたいようだったが、全身を緊張で硬くしてうまく言葉が出せずにいた。
露朱は指先まで緊張しきった筑紫の手をほぐすように撫でて、その緊張が解かれるのを辛抱強く待った。
露朱の体温を手のひらに感じて、筑紫の表情は次第に和らいでいった。
一つ息を吐いて、筑紫が口を開いた。
「あの……」
「うん?」
「ぼく、その……抱いてほしいんです、あなたに……」
目を閉じて空いた片手で自分の顔を隠しながら告げる筑紫の様子は、まるで犯した罪を告白するかのようだった。
この青年は、これまで同性が好きであること、女のように抱かれたいと思っていることをひた隠しにして生きてきたのだろう。
相当の覚悟を持って花街に、この店にやってきたに違いない。
露朱は筑紫に言われる前から、彼が“抱かれる側”であることを見抜いていた。
ぼんやりしているように見えるが、伊達に長年男娼をやっていない。
「ぼく、男役は一度しか経験がないんだけど、初めてがぼくでいいの?もっと慣れてて上手で、男らしいかっこいい人が他の店にいると思うよ」
白椿へ来るのは、ほとんどが男娼を抱きに来る客のため、男役を経験したことのある男娼は少なかった。
露朱自身も、客の要望で他の男娼を一度抱いた経験しかなかった。
それに露朱は美しい顔立ちではあったがそれはどちらかというと女性的なもので、体系も小柄で男らしさとは程遠かった。
露朱の言葉を聞いた筑紫は、目の前の男の顔を見つめながら、触れたままだった彼の片方の手をぎゅっと握った。
「露朱が……いい……」
そしてか細い声でそう告げたのだった。
露朱はそっと筑紫の頬に口付けた。その拍子に二人の体が密着して、露朱は筑紫の心臓の音を感じた。
「どうしたら痛くないかはよく知ってるから安心して。気持ちいいことだけ、してあげる」
露朱はそう言うと筑紫の頭をなでながら柔らかく微笑んだ。
筑紫は吸い込まれるように少し頭を浮かしたが、露朱の口付けを唇に受けて再びその頭を寝具に沈めた。
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