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思いがけない提案
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「ん……うう……」
露朱のものが出ていく感覚に、筑紫は思わず声を漏らした。
一度だけ、と決意して花街を訪れたあの日以来、筑紫はほとんど毎週白椿へ来店していた。
仕事が休みの度に訪れ、露朱に会うのも今日で四度目になる。
筑紫は目をつむり、汚れた体を露朱が拭いてくれるのを心地よく感じながら体を休めていた。
「ねえ、筑紫」
露朱に声をかけられ、筑紫はゆっくり目を開ける。
「たくさん買いにきてくれて嬉しいけど、お金は大丈夫?うちの店、安くないでしょ」
露朱の問いかけに、筑紫は思わず言葉を詰まらせた。
正直に言うと、大丈夫ではなかった。
露朱の言うとおり、白椿という店は質は良いが料金はけして安くない。
城に勤めているとはいえ、筑紫がもらっている給料はごく一般的な額だ。
筑紫も一度だけと決めていたので、思いきってこの高級娼館を訪れたのである。
まさかこんなに通うことになるとは思っていなかった。
もちろん、全財産を使いきる、とまではいっていない。
しかしこのまま通い続ければ、遠くない未来筑紫の人生は破綻するだろう。
上手に嘘をつくこともできず露朱と目を合わせたまま固まってしまっている筑紫を見て、彼は何事かを考えるしぐさをした。
筑紫が不安そうにそれを見ていると、露朱は決意したように口を開いた。
「筑紫」
「……なに?」
「筑紫が嫌じゃなかったらだけど、店の外で会わない?」
「え」
何を言われるのかと緊張して待っていた露朱の言葉が全く想像していないものだったので、筑紫の声はひっくり返った。
「いいの?その、客と外で会うなんて」
「禁止されてるけど、ぼく最近客を取れてないから。筑紫は久しぶりの常連さんだから、そのくらいは許されるかもしれない」
聞いてみるよ、と言いながら露朱は筑紫の体を拭くのを再開した。
筑紫は混乱していた。
露朱はなぜこんな提案をしたのだろう。
いや、先ほど言っていたではないか。
“久しぶりの常連客”だからだ。
それ以上でもそれ以下でもない。
頭では分かっているのに、期待してしまう自分の心が憎かった。
筑紫は暴走する感情を必死に抑えた。
けれどやはり嬉しいものは嬉しいのだから仕方がない。
それに少なくとも、自分は露朱に嫌われてはいない。
(まあ許可がおりない可能性の方が高いし、あまり期待しないでおこう。でももし一緒に出かけることができたら……がんばって、楽しい時間にしよう)
自分の体を拭くこのきれいな人が喜ぶ姿を、少しでも多く見られたらいいなと筑紫は思った。
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