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読めない想い
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洗濯場で衣類をたたんでいた津義は、背後からした物音に振り返った。
「露朱、帰ってたのか」
そこには外出から帰ったばかりの露朱が立っていた。
手には筑紫にもらった手紙を持っている。その表情は少しばかり曇って見えた。
「どうした?楽しくなかったのかよ」
「ううん。すごく楽しかったよ」
「それにしちゃあ暗くないか、顔が」
「楽しかったよ」
全く楽しくなさそうに言いながら、床に座る津義の側まで来た露朱の顔は、やはり暗いままだった。
「その手紙、筑紫さんにもらったのか。読んでやろうか?」
津義に聞かれて、露朱は一度うなずいて手紙を差しだした。
手紙はそれなりに長く、内容も熱のこもったものだった。
読んでいる津義も恥ずかしくなってしまうほどだ。
熱烈なラブレターを読み終え、多少の疲労感を覚えて津義はため息をついた。
顔を上げて露朱を見ると、その表情は手紙を読む前のそれと変わらない。
それどころか陰りを深くしてしまったように思えた。
「返事書くか?」
「……もう、手紙は出さない」
津義の問いかけにそう答えると、露朱は手紙を手に取り洗濯場を後にした。
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