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涙
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沈黙を破ったのは、筑紫が鼻をすする音だった。
露朱がおそるおそる顔をあげる。
筑紫の目からは、大粒の涙が次から次へと溢れ出していた。
露朱はぽかんと口を開けて筑紫を見つめた。
泣くほどショックだったのだろうか。
「あの……ごめんね?本当に、その……」
「ち、違うんだ」
露朱が珍しくおろおろしていると、筑紫が口を開いた。
「ぼく、何も知らないで、む、無神経なこと言ってしまって。すごく、申し訳ないって、思うのに。それよりも――嬉しくて――」
泣き濡れた筑紫の瞳が露朱を見つめる。
「嬉しい。すごく嬉しい……練習して、書いてくれたんだよね」
「……うん」
自分の言葉で、必死に書き綴った想いだ。
「ありがとう。すごくきれいな字だ」
「お世辞言わなくていいよ」
「お世辞じゃないよ。本当にきれい、露朱は何もかもきれいだ。――大好きだ」
筑紫の顔は涙と鼻水でぐしゃぐしゃになってしまっている。
露朱は心の中に温かいものが溢れてくるのを感じた。
「ねえ、筑紫」
名前を呼ばれて、真っ赤な目がこちらに向けられる。
「今すごく筑紫のことぎゅってしたいんだけど、してもいいかな?」
そう言って、露朱は筑紫の手を取った。
まだ人を好きになるということはよく分からないままだ。
けれど今、人目も気にせず泣きながら告白するこの人を無性に抱きしめたかった。
筑紫は声が詰まってしまいうまく話せないようで、必死に首を縦に振っている。
露朱は筑紫を抱きしめて、あやすように彼の背中をなでた。
いつの間にか雪は止んでいた。
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