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target3-14.心配症
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目が冷めると、朧気な頭で身体を動かす。
腰に鈍い痛みが走り、何故か身体も起き上がらない。
何となしに横を向くと、赤い髪の男のドアップが目に映る。
しかも腕が巻き付いて解けない。
それらを確認すると颯都はため息を吐いた。
すると隣で身じろぐ音がして腰を引き寄せられ、寝起きの掠れた声が耳許でする。
「…なんだ、起きたのか…颯都、キスしろ」
頭が痛くなった。
さらに血管が切れる音を感じ、颯都は璃空の急所を怒りを込めて蹴った。
力の入らなくなった腕から素早く抜け出し、動かなくなった物体を見下ろす颯都の眼は氷のような鋭さと冷たさを持つ灰青だった。
「一生寝てろ」
ネクタイはいつの間にか解呪され、腕を拘束していたものは簡単に解けた。
服装を整え部屋を出て、風紀委員になってから与えられた一人部屋があるのを忘れ、習慣化した階で降りてカードキーで鍵を開けた。
所々軋み痛む身体を休めようと自室のドアノブに手を掛けた時、後ろのドアが開く音がして振り返る。
一瞬だけ振り返ってから、再び部屋に入ろうとした颯都の腕を雪斗が掴む。
「今までどこ行ってたんですか?」
「…仕事任せっきりで悪かった。今日は俺が全部やるから、お前は休め」
「そういう事じゃないです!…颯都さん、今までだれといたんですか…?」
雪斗はいつもより少し声が低い。
様子が違う事には気付いていたが、颯都は気付かない振りをした。
「…別に。関係ねぇだろ」
突き放す言い方をすると、いつもより強い力で後ろに腕を引かれ抵抗する気力が失せていた颯都は雪斗の部屋に連れて行かれる。
昨日風紀委員の仕事を無断で任せっきりにしたのだ。
何らかの文句を言われる覚悟はとうにある。
向き合うと、肩を引き倒されてベッドに押し倒され、衝撃に腰が痛くなって少し眉をしかめた。
「(またか…)」
前にも似たような事があったが、力の差でいけばいつでも抜け出せるだろうと、颯都は自分の上に乗っかる雪斗を見る。
雪斗は顔を俯いたまま屈んで、颯都のワイシャツの匂いを嗅いだ。
「…違う男の匂いがする」
「……お前は警察犬か何かか?」
スンスンと鼻を鳴らして匂いを嗅ぐ雪斗に呆れ気味に返すと、ワイシャツのボタンに手を掛けられ外された。
「…これ、誰に付けられたんですか?」
「…何が」
「キスマーク。付いてる」
「…虫に刺された」
思い当たる出来事に気分が悪くなったが、ポーカフェイスで隠した。
「…颯都さんって、嘘が下手ですよね」
雪斗はクスリと笑うと首筋に顔を埋め、ピリッとした痛みが走る。
「…何してんだよ」
「消毒。あと、害虫除け」
「(害虫……?)」
雪斗が発した害虫という単語が気になったが、ニッコリと笑う笑顔の後ろに黒いものが見えた気がして、颯都は聞くのを止めた。
やはり仕事の事を怒っているのだろう。
確かに、悪い事をしたと颯都はバツが悪くなって目を逸らした。
「…悪かった」
「何がですか」
雪斗はいつもの敬語口調だが、笑顔といいどこか威圧感がある。
「仕事の事は謝る」
「だから、その事はもういいですって」
苦笑を浮かべる辺り、仕事の事は気にしていないらしい。
他に雪斗が気分を損ねるような事があっただろうかと考えを巡らせる。
「分かります?俺が何で怒ってるのか」
「…分かったら組み敷かれてない」
雪斗はほんの少し笑みを浮かべて、颯都の耳許で囁く。
「ねぇ颯都さん…誰に身体を許したんですか?」
それは颯都にとって、思いもよらない質問で。
なるべく表情を変えないようにしながら、雪斗の質問に答える。
「別に、誰にも許してない」
「颯都。正直に言って」
詰問に遭っているような、変な気分だった。
何故こんなに問いただされるのかとため息混じりになるべく正直に答えた。
「一度も許した覚えはねぇよ」
「じゃあやっぱり無理矢理…!誰ですか殺してきます」
「お前風紀副委員長だろ!冗談でも変な事言うな」
「(…本気で言ったんだけど…)」
突然物騒な事を言い始めた雪斗を落ち着かせようと、颯都は続ける。
「其れに仕返しならもう済ませて来た。心配はいらない」
「心配ですっ!!」
落ち着かせようと思って言ったが、雪斗は眉を寄せて声を大きくした。
「心配いらないって…僕がどれだけ心配したと思ってるんですか!?
帰って来ないと思ったら、前より色気だだ漏れになって帰ってくるし…!
颯都さんが俺の知らない所で虫けらに好きなようにされてたと思うと…想像するだけで……そいつ、どういう風に裁きましょうか?」
「気持ちは分かったから落ち着け!
それに…先に遣るべき事が有る」
雪斗は真剣な表情になった颯都の上から退いてベッドの縁に腰掛け、起き上がる颯都に真剣な表情で問い掛ける。
「やるべき事?」
「今日、彼奴の親衛隊の周りを徹底的に洗う。
雪斗、お前は休んでろ」
「僕もやります。それ、風紀委員会の仕事なんですよね?」
一瞬躊躇ったが、ここで言わなければさっきの事をぶり返されそうで仕方ないと頷いた。
「…あぁ」
それに対して雪斗は綻んだ笑顔を颯都に向ける。
「あ、今度何かされたら俺に言ってください」
「報告する義務はないだろ」
「颯都さん…自分に関しての危険度の認識が低すぎるんですよ」
「別に、普通……」
普通だ、と言い切る前に雪斗の唇が言葉を塞いだ。
驚いている間に舌を絡め取られ、璃空の強引なものとは正反対の優しい口付けが降り注ぐ。
「…んっ……は…!」
昨日体力を使い切った颯都は、最早抵抗する力も気力も何も残っていなかった。
せめてもの抵抗にと肩を掴んで離そうと試みると、雪斗が唇を離して妖艶に微笑んだ。
「だから言ったでしょ?危ないって」
(お前が危ねぇよ…)
(安心して。颯都にしかしないから)
(…安心出来ねぇ)
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