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target3-16.親衛隊
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第二用具倉庫の中に入っていくと、奥の方に手足を拘束され捕らえられている雪斗、その前を体格のいい数人の男達が塞いでいた。
横には人質を取り余裕を見せる親衛隊隊長。
見た目こそ小柄で童顔。
この中では一番無害そうに見えるが、数々の暴力事件を起こした指令塔だ。
一番奥にいる雪斗は眠らされているのか気絶させられたのか、目を閉じたまま首をうなだれている。
抵抗した際に怪我させられたのか、雪斗の頬には小さな切り傷が出来ていた。
「雪斗を離せ」
込み上げてくる怒りを押し止めながら発した声は低く、静かな空間に響いた。
颯都の気迫を受けて尚、親衛隊隊長は口角を上げて嫌な笑みを浮かべる。
「やだね。こいつを餌にあんたを潰してやるんだからさぁ」
「雪斗は関係無いだろ」
「あんたら出来てんだろ?大ありじゃん。
だから、親切にも一緒に片付けてやろうとしてんの」
どうやら何を言っても、雪斗を解放する気はないようだ。
なるべく説得して解決したかったが、相手が手段を選ばないなら仕方がない。
「こんな無意味な事も今日で終わりだ」
臨戦態勢に入ろうとした颯都に、あーそう、と親衛隊隊長がニヤリとしながら男達に目線で合図する。
すると、一人の男が雪斗の顔めがけて腕を振り上げる。
「ッ其奴には手を出すな!!」
鋭く叫ぶ颯都の声に、笑みを浮かべたまま親衛隊隊長は少し首を動かして標的を変える合図をし、男達は僅かに笑みを浮かべて颯都の腕を後ろで拘束する。
親衛隊隊長はゆっくりと颯都に近付きながら、怒りを吐き出し始めた。
「ムカつくんだよね…理事長の親戚の編入生だからって、注目されちゃってさ。
どういう手を使ったのかは知らないけど、璃空様にまで好かれようとするの、止めてくんない?」
「あんな奴に…好かれたい訳ねぇだろ」
颯都が睨みながら答えると、飛んで来た平手が頬を思い切り打った。
目線を戻すと、顔を真っ赤にして激昂していた。
「璃空様を侮辱するなッ!!あのお方はこの学園唯一の純血種…お前なんかが貶す事は許さないッ!!!」
璃空という存在に心酔し切り興奮する少年に対して、颯都は皮肉に笑って見せる。
「俺の知った事じゃねぇな」
言葉を言い終わると同時に先程とは反対の頬を平手が打つ。
肩で息をし興奮し切っている相手を、颯都は変わらぬ強さを持って射抜く。
打たれる時も決して呻き声を上げない。
思い通りにならない男に、少年は苛立ちを募らせ顔を歪める。
対して颯都は顔色一つ変えず、思考も冷静そのものだった。
「…気に入らない…っあんたの何処がいいって言うんだよ!!
周りのヤツらも生徒会も璃空様も…どうかしてる!!」
最初の楽しんでいた様子など既に無く、俯いて募りに募った思いを吐き出す。
暴走する親衛隊隊長に、颯都は思った事を口にする事にした。
「俺だけじゃなく、全部気に入らないんだろ、お前は」
「……うるさい」
「彼奴に近付く奴…近付ける奴が妬ましいだけだろ」
「……っる、さい…」
「親衛隊、と称して彼奴を護る振りして誰も近付かせないように攻撃する。
…とんだ自己満足だな」
避けていた事実を指摘され、目を見開いて甲高い声を上げる。
「あんたに何が分かるッ!?オレはずっとあの人を見てきたんだ……!
初等部の時からずっと…っ昨日今日に来たあんたにオレの気持ちなんて分かってたまるか!!」
思い切り拳を固め、爆発した思いごと颯都に八つ当たりしようとした時。
奥でドサッという物音と共に、大柄な男が一人床に倒れた。
全員の眼がそちらに向き動きが止まったのを機に、拘束された手を利用して男の手を掴み、自分より難いがいい男を背負い投げする。
男はいきなりの事に受け身さえ取れず技が入った。
腕の拘束は解け、颯都は立ち上がると反応が遅い男を拳を横に振って殴り倒す。
「な…っ!何やってんの!!早く倒してっ!!」
親衛隊隊長の声に我に返ると一斉に突っ込んでくる男達。
動きの流れを読みながら、颯都は確実に男達を沈めていった。
一通り片付き、最初きっかけを作り同じく男達と戦っていた少年と背中合わせになる。
「…何時から寝た振りしてた」
「最初から。親衛隊の一件も片付くし、囮になった方が早いでしょう?」
「お前なぁ…俺がどれだけ心配したと思って…」
無意識に言ってから、颯都は口をついて出た言葉に気付いて閉口する。
「心配してくれたんですか…?俺の事」
「…してねぇよ」
背中越しに見つめてくる空色の眼と視線がぶつかると、颯都は動揺を隠して視線を正面に戻した。
雪斗も真っすぐを見て、床に伏せた男達が再び来るか様子を見ながら、言葉を発する。
「俺はもう大丈夫。それに、言ったじゃないですか。
颯都さんと並んで歩けるように、強くなるって」
颯都は一瞬驚いたが、自然に穏やかな表情で笑っていた。
「…あぁ」
徐々に起き上がってくる男達に二人は同時に背中を離し、それぞれのスタイルで戦う。
颯都は攻撃の先を読み、数人が纏めて掛かって来ても適した攻撃を急所に入れる、戦闘慣れした形。
雪斗は武道の模範のような動きで、少しずつではあるが確実に相手を倒していく、武道の優等生の形。
親衛隊隊長が新たに呼んだ増援も着実に倒していき、焦り指示を出す親衛隊隊長の周りの男達の数は減っていった。
ヤケを起こして向かってくる男を倒し、残っているのはあと一人。
「よぉ、お姫様。退屈なゲームも終了と行こうぜ?」
「颯都さんを殴ったの、貴方ですよね?」
声を掛けながら迫ってくる二人の風紀委員に、親衛隊隊長の少年は冷や汗をかきながら後退りした。
(嘘だ、アイツらが負けるなんて)
(何なんだよ…あのデタラメな強さ)
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