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target4-18.盗撮
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風紀委員室に入ると、颯都は休憩中でコーヒーを飲んでいた。
「あぁ、お疲れ。今紅茶淹れる」
「いいよ!…それより、話したい事があるんだ」
給湯室に向かおうと立ち上がる颯都を引き止める。
「見回りで問題でも起きたのか?」
「これなんだけど」
椅子に座り直す颯都に、男から没収した携帯の画面を見せる。
雪斗も衝撃を受けた、あの写真を。
「どういうことか、正直に話して?」
「……は?何だ、此……」
画面を見た颯都が、茫然自失といった様子で固まる。
「盗撮、されてたんだよ」
颯都は昨日の記憶を呼び起こし、混乱する頭を整理する。
「(…ちょっと待て…、確か俺は西園寺に頼まれて雑用してたんだよな。其れで、終わってから急に眠気に襲われて…そんな悪夢を見た気もするが……夢じゃ、無かったのか…?)」
夢だと思っていたそれがじわじわ現実味を帯びてくる嫌な感覚に、手の甲で口元を覆う。
「ねぇ」
雪斗の声で思考の海から戻される。
じっと見詰める空色の目。
「…俺の不始末だ。悪かった」
「そういう問題じゃない!…同意なの?」
「…起こっちまった事を兎や角言っても仕方ねぇだろ」
何を聞いても、どこか聞きたい答えとは違う返答が返ってくる。
雪斗は次第に、もどかしくなって来た。
「何で俺に言ってくれないの?」
「お前に言っても仕方無いだろ」
「知りたいんだ。颯都の事」
「知ってどうするんだよ」
淡々としたやり取りが続いて、雪斗は大きな声を上げる。
「心配なんだよ!…最近様子おかしいし、危ない目に遭ってるんじゃないかって…」
不安げに眉を下げ、トーンを落として続ける。
颯都は自分を見詰める心配げな視線から目を逸らし、思わず溜め息が出る。
好きでそうなっている訳じゃない。
自分が性的対象と見られる事にも吐き気しかしない。しかも、其奴に良いようにされているなんて。
言える訳がないだろう。
自分でも容認してはいないのに。
「兎に角。俺の問題は自分で片を付ける。お前が介入する必要は無い」
区切りを付けるようにピシャリと言い放つ。
「けど…」
「其れ縒り、体育祭の準備が有るだろ。其方(そっち)に気を回してくれ」
まだ納得出来ない様子の雪斗に、仕事の指示を出しながら机の上の書類に目を向ける。
「…分かった」
以降、颯都は黙々と書類と格闘し始め、雪斗も渋々承諾する他無かった。
自分の机に戻り掛けて、思い出したように振り向く。
「あ、この写真なんだけど、どうする?」
「…っ、消すに決まってんだろ」
顔を上げ視線が合ってから、颯都は戸惑いがちに目線を逸らした。
「(あ、今の可愛い…)…どうしよっかなー?」
反応がもっと見たくなった雪斗は、携帯をプラプラさせながら微笑む。
が。
「携帯とお前、一遍に凍らすぞ」
「ごめんなさい。消します」
氷のように凍てつく視線を受け、素早く前言撤回。
ボタンを操作し画像を削除した。
「写真を悪用しようとした人、適切な処分を与えたから、安心して」
「……あぁ」
満面の笑顔の雪斗が、どこか恐ろしくも感じたのだった。
(雪、お前偶に…)
(ん、なに?)
(…いや、何でもねぇ)
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