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target5-4.競り合い
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期待を込めた視線に堪え兼ねて、颯都は目を閉じる。
「元々此処は問題だらけだったろ。偶々俺が其れに気付いて意見しに行ったら、面倒臭ぇ問題自体押し付けられただけだ」
其奴と理事長の共犯でな。と視線が向けられ、今度は雪斗に視線が集まる。
ははは~…と雪斗は誤魔化して曖昧に笑った。
そこで時計を見た少年が、急に荷物を持ち立ち上がる。
「あ…僕、放送準備があるからそろそろ行かないと。
お話出来て…嬉しかったです」
最後にはにかんでから小さく一礼をし、パタパタと走っていく。
俯き加減だった為に前方で人にぶつかり、何度も頭を下げていた。
「…前のお前に似てるな」
「え、そう?」
笑みを浮かべる颯都だが、雪斗はあんなだったっけと首を捻る。
二人も立ち上がり、談笑しつつもテントに向かった。
午後の最初の競技は、騎馬戦だった。
早速組まれたチームごとに騎馬を作っていく…のだが。
「賭けをしよう」
「断る」
璃空が颯都に近付き、話を持ち掛ける。
学園のツートップが近距離で話している様子に、遠巻きに注目が集まる。
最も、会長の突飛な行動に慣れている生徒会は呆れながらも傍観していた。
「…まぁた会長がやってるよ~…」
暑さでぐったりと机に寝そべった昶が呟く。
「より多くの数の鉢巻きを取った方の勝ちだ」
「断るって言ってんだろ」
「怖じ気づいたか?」
「…はぁ?」
安っぽい挑発だ。
颯都は腰に手を当て、呆れ顔を相手に向ける。
「負けるのが怖いんだろう?案外度胸がないんだな」
「…あぁ?」
聞き捨てならない言葉にピクリと眉が吊り上がる。
「それとも…臆病なだけか」
嘲りを浮かべる璃空を颯都は真っすぐ睨む。
「上等だ。売られた喧嘩は買ってやる」
「そうでなくてはな。面白くない」
ニタリと笑み、颯都の腕を引き寄せ耳許で囁いた。
「勝ったら…俺と付き合え」
颯都は肩を押して離れ、嫌悪感で歪めた表情のまま睨み付けた。
「俺が勝ったら、仕事以外で今後一切接触して来んな」
当然、話の内容が聞こえる事はなく。
「あの2人、なに話してるんだろ~?」
「チ…、颯都兄に盗聴器をつければよかった」
特に双子が残念がっていた。
そうしている間にホイッスルで開始の合図が鳴り、雄叫びと共に一斉にグラウンドが混戦状態になる。
「あれ~、颯都お兄ちゃんと会長は!?」
「くそ~、見失った!」
あまりの人数の多さに、双子は二人の騎馬隊を見失う。
「あそこだよ」
雪斗が真剣に見つめる先には奮闘し早速白組の鉢巻きを奪った颯都の姿。
次々と勇猛果敢に挑みながらも楽しげで、笑みさえ浮かんでいる。
「おーっ、すげー!」
「ねぇねぇ!雪斗くんはどっちを応援してるの?」
「…んー…、俺は白組なんだけど…個人的に紅組を応援したいかな」
「颯都兄がいるから?」
歓声を上げて応援しつつ、尋ねると雪斗の頬が染まったのが横顔でも伺えた。
無論、璃空への歓声でうるさかったのは言うまでもない。
徐々に騎馬隊の数が減っていき、終了を告げるホイッスルが鳴った。
生徒会長と風紀委員長の目覚ましい活躍のお陰で、紅組の圧倒的な勝利となった。
必死の形相の二人が同時に手に握り締めた鉢巻きを掲げる。
二人しか知らない賭けの結果。
同時に舌打ちをした。
鉢巻きの数は、同じ五本。
どちらにも軍配は上がらず終いだった。
周りから見れば、ただ仲が良くて張り合っているというようにも見える。
(あの二人、何してんだろ?)
(さぁ……)
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