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target5-6.差
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続いて各々がリレーの配置に着き、空に打ち上げられた銃声と共に一斉にスタートダッシュを切る。
2-Aは前後に等間隔の差を空け、2番のまま次の走者にバトンを渡した。
二走者三走者と伸び悩み、颯都がバトンを受け取る時は4番までに転落していた。
「(…少し本気出すか)」
受け取ったバトンを握り締め、走り出す。
颯都は前を走っていた者たちを見る間に抜いていく。
逆転劇に歓声や拍手が響く中、熱心に見つめる姿が。
「かっこいいな…」
放送部の席から聞こえた声に、同じ方向を見つめている雪斗が呟く。
「…そうだね」
目線は外さずに言葉だけを交わす。
「なんだか、すごく輝いて見えるんですよね…」
「うん、確かに。今日は一段と生き生きしてるね」
日頃何らかのストレスを溜めている彼にとっては、ただ単に発散しているだけなのだろう。
しかし生き生きとして汗を掻く姿は、普段の生活では見れない一面で。
これをきっかけに隠れファンが増えていきそうだ。いや、絶対増える。
頭の片隅で可能性を危惧しながら真剣に見ていると。
ついにアンカーの会長・璃空へとバトンが伸ばされた。
「(上出来だ。後は任せろ)」
「(…手ぇ抜いたりするんじゃねぇぞ)」
走りながらもテレパシーでやり取りが行われ、颯都はバトンを璃空に繋いだ。
「ナイスチームプレイ!」
抜群のコンビネーションに会場が湧き、双子は言葉と同時にハイタッチした。
颯都は一息吐いてから、走っている璃空を見る。
一位を張り合っているのは、バスケ部で瀬川と並んで実力のある奴だ。
僅差の勝負を繰り広げ、様々な声援が飛び交う。
しかし璃空の意識は別の方へあった。
颯都が見ている事に気付いていたからだ。
「(…俺が負ける筈がないだろう)」
ゴールに近付き、ぐんとスピードを上げていく。
目の前の赤い髪に追いつこうとスピードを上げようとするも、追いつけない。
追い抜かれた距離が広がっていき、数秒差でありながら璃空が一位でゴールした。
大盛りの中、体育祭は表彰式へと移行する。
群がってくる人混みを掻き分け、璃空は足を進めた。
アイツはどんな反応をするだろうかと薄く笑みを浮かべながら。
「今日は凄い活躍だったね、颯都」
「そうか?こんなの普通だろ」
何気ないはずの光景に、足が止まった。
「ううん。かっこ良かった」
頬を染め、笑顔が向けられた先。
「…そうかよ」
さっと目を外し、そっぽを向く颯都。
棘がチクリと胸に刺さった気がした。
驚いて胸の辺りを見ても外傷は見当たらない。
その後、担任の琉生が茶化していたがそれも耳に入らない。
表彰式でクラスが一位を飾っているのに、それらの出来事が途端にどうでも良く感じてしまった。
戻り際、生徒会の面々が自然と集まってくる。
「やっぱり会長と颯都お兄ちゃんのとこが一位だったねー!」
「よっ、流石会長!」
「それもこれも、オレが手加減してあげたからだけど~」
「いい加減嘘はお止めなさい」
いつもの馬鹿馬鹿しい会話さえも、笑う気が起きない。
「あれ~会長?」
「どうしたの~会長?」
すぐに手に入るはずだった。手に入れたはずだった。
その距離があまりに遠く、感じた。
「…今日は特別に騒げ。俺が許す」
璃空が発した言葉で、双子が高らかにハシャいだ声を上げる。
賛同してハシャぐ振りをしながら、昶と京弥はいつもと様子の違う璃空に気付いていた。
(俺には見せない、あんな表情)
(何故…アイツには見せるんだ)
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