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target5-20.似た者同士
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朝。しかし快適な目覚めなどではなく、身体中が軋む。
「(あ…?俺は確か…、廊下で頭痛に襲われて、其れで……ッ!?)」
痛みの中で朧気に、しかしハッキリと身体が覚えていた屈辱に熱が上がる。
隣で寝息を立てる璃空に蹴りを入れて抜け出し、服を着てドアの解錠をし部屋を出るまで一分内。
考える前に身体が動き、部屋を飛び出していた。
…昨日は恐らく、今までで一番酷い陵辱を受けた。
何時も人の話を聞かないが、行為を辞めさせようと口にすれば更に悪化するだけだった。
「(そういえば…雪の事を気にしてたな…。
彼奴、雪が好きなのか…?)」
盛大な誤解を持ったまま、それ以上は気にする事なく颯都は日常に戻った。
此の儘璃空には目を覚まさないで欲しいと、思った。
幸いにも、午前中の授業で璃空が突然入ってくる事はなかった。
―――――――…
―――
―――――……
焼きそばパンが、空から降ってきた。
いや、正確には落ちてきたのだが、下からその光景を眺めていた悠希には降ってきたようにしか見えず…ーー
「ぶっ!!?」
見事、顔面でキャッチした。
「ナイスキャッチ」
その声には、聞き覚えがあった。しかしーー、
「ふざてんじゃねーぞッ!いきなり何しやがる!!?」
勢いよく身を起こしたので重力で焼きそばパンが下に落っこちる。
目の前の颯都は、特に悪びれもなく冷静な様子で。
「いや、取るか避けると思ってな?」
「どっちもできるか!!」
鮮やかな突っ込みが屋上の空に響いた。
「しかしよォ…なんで焼きそばパンなんだ?」
ついでに買ったらしいそれを開封していると、パックの牛乳が飛んできて、今度は片手でキャッチする。
「ゴールデンコンビなんだろ?」
「…なんだそれ」
他愛ない会話をしながら食事をする。
そんな些細な楽しささえ、悠希はあまり味わった事がない。
何故なら今まで、噂されている通りの一匹狼だったからだ。
食べ終わってから寝転んで空を見上げていた悠希が、独り言のように話す。
「…オレぁよ、今まで全部ウザかったんだ。
親や先公…イチャモンつけて絡んでくるヤツら…それを遠巻きに見てテキトーな事言ってるヤツらも」
夏の空はどこまでも広く、高い。
青々とした空を流れていく白い雲を、いつも何をするでもなく眺めていた。
そうして、退屈な時が過ぎ去っていくのをただ待っていた。
颯都は悠希の横顔を見ながら、黙って話を聞いている。
「どいつもこいつも同じだ。オレを厄介者として見てる」
初等部から目付きの悪さと態度が原因で上級生に呼び出された。
気に入らないと絡んでくるヤツを倒す内に、喧嘩ばかりは強くなった。
自分もまた、苛ついた時は周りに当たり散らした。
そうして人はどんどん遠ざかっていき、学年が上がった今では誰も話しかけて来ない。
「話しかけてくるヤツは大体ビクビクしてるか、オレが怒鳴った瞬間逃げる」
「俺も似た様なもんだな」
「そうか?だとしたら、相当嫌われてんなァ」
「違いない」
途中から颯都も寝転んで話に加わる。
何処か共通点のある二人は、屈託なく笑った。
…それに。口元を緩ませ続きを喋ろうとした悠希だったが。
「つーか狭ぇ、もうちょっとそっち行け」
「はぁああ!?これ以上行ったら落ちる…おわッ、マジで落とす気か!?」
「図体デカいのが悪い」
「どんな理屈だよッ!!…オイ、ヤベ…おわあぁ!!?」
寝転んだ颯都が陣地を広げようと悠希の身体を押しやり、落ちる寸での所まで追いやられた。
その日は賑やかな声が屋上に響いていた。
(…お前くらいだよ)
(初対面でオレを褒めたのは)
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