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target6-2.女装
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それぞれが騒がしく出し物の最終準備を行っている頃、颯都のクラスも喫茶店の開店準備を行っていた。
内装やテーブル、お茶菓子はセッティングの大体を終えてあり、後は着替えを済ませるだけとなっていた。
何人かは既に着替えており、先に着替えていた璃空が颯都に紙袋を差し出した。
「お前もこれに着替えて来い」
「…あぁ」
受け取った颯都が個室に入り、袋からそれを取り出して固まった。
「……は…?」
「どうだ、着替えたか?」
向こう側から悠然と声が聞こえた瞬間ドアを開け放つ。
「ふざけんな!何だよ此!!」
璃空に突き返したそれは…白いフリルがついた黒のメイド服。
どう見ても、璃空が今身に付けている服とは違う。
「此じゃなくてウェイターの服だ!」
「同じ接客服だろう。何が不満なんだ?」
「違うだろ!明らかに男が着る服じゃないだろッ!」
「着てみない事には始まらないぞ」
「何がだよ。着ても何も始まらねぇよ!寧ろ終わる」
「折角俺が用意してやったんだから着ろ。今すぐに」
顔を突き合わせて睨み合う、両者譲れない戦いが続く。
…誰がお前の変態的な趣味に付き合うか!
しかも、相変わらず上からの横暴な態度に腹が立つ。
颯都が強要されるほど反発する性格だと知っている璃空がふっ、と笑みを浮かべる。
「無駄だ、颯都。お前はこれを着る運命にある」
「知るか。運命は俺が決める」
「着る服がこれしかなくても、か?」
その言葉に、颯都がピクリと眉を吊り上げる。
「…どういう事だ」
「そのままの意味だ。ウェイターの服はお前を除いた人数しか用意していない。つまり」
そこで璃空は言葉を区切り、口端を持ち上げた。
「最初から他の選択肢はない。それとも…俺が手伝ってやろうか?」
「~~っ…死に曝せッ!!」
わなわなと震えていた颯都が璃空の頬に思い切りグーパンチを決め、吹っ飛ぶのにも構わずドアを閉めて遮断した。
派手に衝突する音と悲鳴が聞こえたが、そんな事今は問題じゃない。
「………」
引き吊った表情で改めて"問題"と向き合う。
黒い生地にフリルが散りばめられているその服は、手触りからしても決して安物ではない事が窺える。
「(…こんなもんに余計な金使ってんじゃねぇよ……)」
げんなりとしながらもう一度袋の中身を確認してみると、カチューシャやニーハイ、黒い靴などの付属品が出て、颯都は肩を落とす。
そのどれもが新品のブランド品である事が一目見て分かるからだ。
男性のサイズがあるわけがないので、しかもこれはオーダーメイドなのだろう。
考えて溜め息を吐き、渋々その洋服を着始める。
…こういう趣味はせめて、異性に向けて欲しい。
ましてや、自分に向けられる日が来ようとは。
最初で最後だと思いたい。
着替えが終わり…颯都はかなり戸惑っていた。
「……まだか?」
「いや……だ、駄目だ」
足がスースーする…というか、このスカートオーダーメイドにしては短くないか?
第一、こんなフリルが付いた服を着て、しかもそれを見られるなんて……死ぬ程恥ずかしい。
そんな颯都の羞恥心との葛藤を知らず、堪え切れなくなった璃空がドアを開けた。
「(しまった、鍵を……)」
振り返ると、璃空がドアを開けた体勢のまま固まっている。
暫く待ってみたが、言葉を発さずに見詰めてくるので羞恥が余計に襲ってきて先に目を逸らす。
「…何だよ、見んなよ…」
知ってんだよ、似合わない事くらい…。
着せた張本人を睨んでいると、珍しく顔の赤い璃空が視線をさ迷わせた。
「これは…ヤバいな」
(想像以上だ…)
(あぁ、早く着替えてぇ…!)
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