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target6-6.模擬店散策
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文化祭は思っていたより活気があって、颯都の嫌な気分も忘れさせた。
鬼の風紀委員長と一匹狼の不良、ごく平凡な生徒という奇妙な組み合わせは十分すぎる程人目を引いた。
「もーらいっ」
「あ、俺のたこ焼き!」
「一個位で騒ぐなよ。…俺のも一口やるから」
三人は模擬店を回り、すっかり文化祭を楽しんでいた。
拓海にたこ焼きを奪われ騒ぐ悠希に、颯都が齧りかけのフランクフルトを向ける。
「ほら」
「うおっ、マジか!(…いや待てよ?これって…)」
嬉しさと戸惑いの間で揺れ、一瞬固まる。
その隙に横入りしてきた拓海がそれに齧り付いた。
「あ゙ぁあぁあぁ!!なにすんだよッ!!」
「いや~、つい」
「ついってなんだ!!ついって!」
激昂して掴み掛かられても、拓海は笑って流していた。
最初は悠希を怖がっていたが、実はそんなに怯える必要はないと知った為か、既に打ち解けてしまっている。
…というか、悠希の方が遊ばれてんな。
拓海は天然で弄ってんのか?
様子をただ観察していた颯都が呆れながら笑う。
「そんな食いてぇなら二人にやるよ」
「(いや、微妙に違ェよッ!)」
「え、いいの?」
「お前は食いたいだけかよッ!」
そんな騒がしさに包まれながら、先程それぞれで描いたお絵かきせんべいを悠希は早々にボリボリと食べていた。
「次はどこ行くんだ?」
「おーい、五十嵐ー!」
すっかり馴染んだ空気間の三人が歩いていると、人だかりの出来た模擬店から手を振っている人物に気付いた。
「瀬川。バスケ部の出し物か?」
手拭いを頭に結び、屋台風の羽織を着ていつもの笑顔を見せる傑は相当様になっている。
「あぁ、そんなとこ!ひとつ食っていかねぇ?」
「ん…、二つ頼む」
颯都は争っていた二人を思い出し笑みを浮かべて、傑に代金を支払う。
「おう!…お好み焼き二丁ー!!」
傑の声にそれぞれが大きな声で返答する様子を見て、颯都は笑う。
「(流石バスケ部キャプテン)」
協力しながらお好み焼きを作る姿も似合っていて、成る程な思った。
バスケ部にいる時の声援からしても確かだろう。
誰に対しても見せる快活な笑顔や、バスケをする姿はこの学園で人気を呼んでいそうだ。
繁盛している様子を眺めている内にお好み焼きは出来上がり、二つ分が入った袋を手渡される。
「ごめんなっ、忙しくてあんま喋ってられねーんだ」
「構わねぇよ。頑張ってな」
最後にエールを送って店を後にし、人混みに紛れた二人の気配を追って探す。
「…くそォ、次こそ当てる!」
聞き覚えのある声がしてそこに行くと、悠希が射的に熱中していた。
「随分熱中してんな」
「そうなんだよ~…そうだ、颯都もやってったら?」
「お前…五十嵐か?」
「おぉ、伊月」
テントの中で紺のエプロンを掛け店番していたのは、剣道部の修だった。
「って事は此処は剣道部の模擬店か」
「あぁ。どうだ?五十嵐もやっていかないか」
修の進めと、キラキラした目で猛烈に頷く拓海に後押しされ参戦する事になった。
「(銃の重さ、コルクの質量、狙う角度…)」
颯都は狙いを定めながら、瞬時に頭の中に計算の解を導き出す。
悠希は一向に取れない一方で……、
隣には飛ぶ鳥を落とす勢いで次々に賞品を取っていく颯都の姿があった。
ものの数分で賞品の小山が出来上がった。
「おぉ…見事だ。全くお前にはいつも感服させられる」
「ほんと、完璧だ…!」
「それ程でもねぇよ」
二人の尊敬の眼差しと褒め言葉に、颯都は苦笑しながら頬を掻く。
そんな光景の端で、健闘虚しく一個も賞品獲得に至らなかった悠希が真っ白な灰になっていた。
「よし、次はここだね!」
おどろおどろしい看板の前、三人は立ち止まっていた。
「オイ、待てよ…ここって……」
「大して怖くもなさそうだな」
「うん、行こ行こ!」
「待てっ、オレの意見を……」
二人に両腕をがっしりと掴まれ引き摺れる悠希の、断末魔の凄まじい悲鳴が、校舎を突き抜けた澄み渡る青い空に響いた。
(ぎいいぃいやぁあああぁ!!!!!)
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