アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
target6-10.憂鬱
-
颯都は無事人気投票一位を勝ち取り、璃空の強制交際を退けた。
「…本気で言ってるのか?出来る訳がない」
「出来ないじゃなくて、遣るんだよ」
賭けに勝った颯都が提示した条件は―――仕事以外での接触禁止令だった。
それは好を奏し、前のように付き纏われて被害を被り、親衛隊から呼び出しを食らうという二次災害は無くなった。
文化祭以降各方面からの呼び出しやトラブルが増えたが、その度一人で返り討ちにしているので問題はない。
今、颯都を憂鬱にしている問題があったとすれば。
――朝、いつものように顔を洗うと、自然と目の前にある鏡に映る自分と向き合う事になる。
「……」
まだボタンを一つ開けている襟元から、赤い痕が覗いて眉を寄せた。
会長が手が出せない事を機に、昶や雪の急襲が増えたのだ。
拒絶も説得も通じない、二人。
意見をぶつけ合ってもどこか違う次元で話しているようで、どこまで行っても平行線。
例えば俺は風紀委員長でお前は副風紀委員だろ、と颯都とが言えば、「颯都は颯都だよ」と真剣な顔で言ってくるのだった。
昶もそう。立場上の事を気にしようともしない。
…釈然としない思いがわだかまっている。
成すべき事があって此処に来ているというのに、俺には何一つ出来ていない。
妨害を受けるからだと、他人の所為にしても良かった。毎日そのリスクと戦っているのだから。
だが…。
颯都は後頭部を掻き、無理矢理思考を断った。
日常茶飯事になってしまった頭痛と共に、吐き気のような気持ち悪さを感じる。
――…何より嫌なのは、それにほだされている自分だ。
授業中、璃空から無言のねちっこい視線を遣り過ごし、部活動で発散をして、減らない仕事をこなし、妨害を跳ね返す。
その一方で、何処か苛立ちを感じていた。
日も暮れ始めた夕方、颯都は校舎裏に立ち尽くしていた。
「(……痛ぇ)」
それは、親衛隊に四方八方から襲われ負傷を負ったからではない。
酷くなる痛みに頭を押さえる。
地面には、襲い掛かってきて呆気なく倒された輩が転がっていた。
「颯都は、やっぱり完璧だと思う」
三人で輪を囲んでいる、その内の拓海が割り箸を割って言った。
仕事を終えた後、悠希の誘いで部屋を訪れ、丁度夕食時だったのでそれぞれカップラーメンに湯を淹れて話していた。
初め相談しようという気は無かったのだか、日頃の疲れからか、ジッと颯都が話し出すのを待っている二人の視線に負けてか、いつの間にか打ち明け話をしていた。
「一人で全部の問題と向き合うなんて、僕には出来ない。僕が同じ状況にいたら、真っ先にその立場から逃げ出して、逃避してる。
けど、颯都は嫌でもちゃんと向き合ってる。それは凄いと思う」
二人に見られながらも拓海が真剣な目で告げる。
……が。
「……オメーよォ…、表情と動作が合ってねーんだよ」
悠希の突っ込みは正しい。
拓海はカップ麺のそばをズルズル啜りながら、真顔で喋っていたのだ。
「だって伸びちゃうよ?」
「だからってなァ…」
呑気な様子に、呆れ顔で溜め息を吐いた不良が幾分かまともに見えてしまうのも仕方がない。
思わず、クスリと笑みが零れた。
「あぁ、良いよ。折角のラーメンだもんな」
「もごもごもご!(流石颯都!わかってるー♪)」
「…じゃ、俺も」
言い合いを止め颯都を見た二人は一瞬固まって、賑やかにラーメンを食べ始めた。
なんだか、少しだけ軽くなった気がする。
変わらず何でもない談笑をしながら、颯都は漸く顰めっ面を解けた。
食べ終えて満腹になった時、(拓海はデザートに手を着けていたが)悠希がふと口を開く。
「……俺よォ、力になるから。お前をよく思わないヤツなんて、俺が蹴散らしてやるから」
だから。悠希は俯き加減でボソボソと告げた。
一人で溜め込むなよ、と。
……驚いた。
解決の方法が無くても、二人なりの答えをくれた。
颯都は疲れ果てた身体に何故か力が湧くのを感じながら目を細めた。
「…有難う」
照れた悠希がそっぽを向くと、前の拓海が小声で耳打ちして言った。
「…悠希君、そういう事は目を見て言った方がいいよ!」
「うっせぇッ!!」
相変わらずの光景が嬉しくて、楽しかった。
(ね、今のって…なんか告白みたいだったよね!)
(ち、違……ッ!)
(告白すんのか?協力するぜ)
((これは……手強い……!))
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
96 / 108