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target6-11.暴力事件
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―――放課後の風紀委員室。
「颯都、この暴力事件なんだけど……」
「…またか」
報告書を渡す雪斗も、受け取る颯都も眉を顰める。
「主犯も不明の暴力事件…、これで三件目だ」
雪斗のボソリと呟いた言葉を聞きながら、三件の事例を照らし合わせる。
「…時間、加害者、被害者共にバラバラで規則性無しか…」
「証言も取ってるけど、どれも身に覚えがない、だもんね…」
資料を見て何か掴めないかと二人は模索するが、見えない目的に沈黙する。
「…見回りに行って来る。雪、お前は報告書を纏めてくれ」
椅子に掛けていたブレザーを着ながら指示を出し、風紀委員室を後にする。
これだけ状況証言を取っているのに、手掛かりが一つも見当たらないなんて…どうも可笑しい。
愉快犯か…
颯都には、別の"誰か"が素行の悪い生徒を加害者に仕立て上げ、騒ぎを起こして楽しんでいるように思えた。
その目的が見えない事には……事前に阻止する事も困難だ。
見回りをしている間も、薄気味の悪い何かが付き纏っているようで落ち着かなかった。
「………はーやとっ!!」
後ろから襲い掛かられ素早く交わすが、その動きを見抜いた相手が颯都を捉えた。
この気配も、そんなの能力を持っている相手も、一人しかいない。
「…何か用か」
「相変わらず連れないなぁ~。用がなくても会いたいに決まってるじゃん」
絡められる腕をなんとか外し、昶の身体を押して離す。
「今其れ所じゃねぇんだ。他を当たってくれ」
「…あぁ…、最近の事件で忙しいんだ?」
「まぁな。此からどうなるかも分からねぇ」
腰に手を当て、ふっと視線を外して眉を寄せる颯都は、こうしている今も事態を案じているであろう事が伺える。
「…そっか。まぁ頑張ってよ」
「…随分潔いんだな」
いつも手が早い昶があっさり折れ、思わず不審に思って疑いの目を向けた。
「まさか。俺を疑ってるワケ?」
「お前はESPの持ち主だし、関連性が無いとも限らねぇ」
「俺はこんな意味分かんない事はしないよ」
「どうだか」
本当に疑っている訳ではない。
それは、お互いの間に少し気を緩めて笑っていられる空気間があるからか。
「ねぇ、ところでさ。そろそろオレと付き合う気になった?」
「それは望み薄だな。他を当たれ」
えー!と叫ぶ昶の声を後ろに、颯都は気を引き締めて歩き出した。
頭では素早く一連の事件の判断材料を並べて、犯人との関連性を考えていた。
「(早い所どうにかしねぇとな…)」
―――――――…
―――
―――――……
犯人の手掛かりを些細でも見つけようと調査をし続け、2日が経った頃。
風紀委員会の二人に気になる情報が入った。
「………咲良が?」
「そう。襲われた人達には、クラスや学年に共通点はなかったんだけど、実はみんな寮長の元親衛隊だったんだ」
「………、」
思いもよらなかった方向から人物が上がり、颯都は口元に手をやったまま考え込む。
「…俺が聞き込み行こうか?」
二人が以前親しかった間柄だと聞いている雪斗は、気遣うようにその顔を見詰める。
颯都は机の上に広げられた被害者達の資料に目を落として何かを考えていたが、一息吐いて立ち上がった。
「いや、俺が行く。雪、情報サンキューな」
早口で言うと机の隅に資料を纏めてあっという間に出て行く。
「………」
出て行った後、颯都の机の上に見覚えのない便箋があるのに気付いた。
その頃、颯都はある場所を目指して廊下を歩いていた。
雪斗には言わなかったが…、今朝颯都宛ての手紙か届いていた。
『2人だけで話がしたい。放課後の校舎裏で待っとる。咲良』
ピンク色の便箋には、それだけが書かれていた。
同じように、便箋の中身を見た雪斗が不安げに曇らせた顔を上げた。
「颯都……」
―――…放課後の校舎裏、初秋の風が吹く木々達に囲まれ、二人は再会した。
(…ようやっと、会いに来てくれたんやね……颯都)
(……あぁ)
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