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target6-12.暴露
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廊下で擦れ違うだけだった二人が久し振りに向き合って対面した。
あまり外見は変わっておらず、少し咲良の背が伸びたくらいだ。
しかし向き合っていても、どこか生温くて寒い、微妙な空気が漂っている。
「…なんや、楽しゅう学園生活を満喫してるみたいやん?いろんな有名人と連んで」
…笑い方が、随分違う。
咲良は、こんな嫌味な笑い方はしなかった。
「……あぁ、そう見えるかもな」
「オレは落ち目ばっかりやのに、なんなん?この差は」
「………」
やれやれ、というように両手を広げる咲良に、颯都は眉間を寄せたまま何も言えなくなる。
「…まぁええわ。あんさんに、聞きたいことがあんねん」
一息吐き、颯都を見詰める桃色の瞳は、雰囲気の所為か以前より攻撃的に見える。
「…何でオレは除け者にしといて、他は許すん?」
目がキラリと、鋭く光った気がした。
前の明るい光ではなく、鈍く暗い光だ。
前とは異なる咲良を、少し眉を寄せながら目を逸らさずに見詰める。
「…それは違う」
しかし、その答えに納得がいかなかったのか、咲良の表情に更なる亀裂が走った。
「……何がや。実際そうやろ?自分らだけ楽しげで、オレは蚊帳の外や」
「………、」
颯都は唇を結び、咲良を見詰める。
噂で言う歪曲した見方をされるのは悔しいが、このまま責められて反論を続けても、咲良の気が収まるとは到底思えない。
あれこれ言い分を話すよりも、沈痛でも咲良の言葉を受け止めなければいけないと、思った。
実際此よりも酷い事をしたと、分かっている。
「……あぁもうええわッ」
何の答えも聞けなかった咲良は苛立たしげに叫んで、顔を歪めて俯いた。
気まずい沈黙が二人を支配する。
ここで謝って、咲良に許して貰うという選択肢は颯都の中には無かった。
…自分勝手な都合で振り回して傷付けているのに、今更許されるとは思っていない。
それに、また傷付けるかも知れない。
何のフォローも出来ない悔しさに唇を噛み締めていた時――――。
「ほら。俺の言った通りになった」
全く別の第三者の声がしたと思ったら、それまで気配を感じなかった咲良の後ろの校舎裏の影から、誰かがぬるりと姿を現す。
「初めまして…颯都センパイ」
「……何で俺の事」
生徒の制服を着ているが、面識はなかった。
呼び方から下級生なのは分かったが、このタイミングで現れた人物に警戒心がざわめいていた。
それに…感覚が鋭い自分でも気付かなかったのは、意図的に気配を絶っていたとしか思えない。
温室育ちのこの学園で、そんな事を出来る人物がどれだけいるだろうか。
「有名じゃないッスか。知ってますよ、センパイの事ならなんでも」
「……どういう意味だ」
「知ってるんですよ、センパイの正体を」
目だけは鋭く、口元に笑みを浮かべている。
不気味さも相俟って、ゾクリとした冷気に背中を撫でられた気がした。
「…どういうことや?正体って………」
謎の人物が登場してから口を閉ざしていた咲良が戸惑った表情で颯都を見る。
「いくら理事長の親戚といえど、編入早々に委員長に任命される。そして多くの吸血鬼をタラし込む。普通おかしいと思うっしょ?
何故そんな事が出来るのか…答えは……"魅了"する力があるからだ」
「…でも、魅了は純血種にしか使えんはず……」
困惑した表情からみるみる驚きの表情へ変わっていく咲良。
そこで、決定的を打った。
「颯都センパイ……あんたは、純血種だ」
「…何の確証があってそんな、」
「確証ならあるんスよ。俺は、あんたの過去を知ってる」
血が、騒いでいる。
止めろ。それ以上、言うな。
気持ち悪い感覚が胸の奥に渦巻いて叫び出しそうになのに、上手く声が発せられなかった。
「11年前…純血の吸血鬼に一家を惨殺された五十嵐家の一人息子…そして唯一の生き残りだ」
(そんな……ウソやろ……?)
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