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八。
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そう言うと、彼はコートの中から2つの物を取り出した。
「これがその証拠です。」
それは鳥の絵が彫られた文字盤と
"名酉"と書かれた古い紙。
「そして後ろにいるのが僕の付き人、 頭月 葵(とうづき あおい)。
葉月の称号を持つ、僕の月華です。」
そう言うと、葵は礼儀正しく頭を下げた。
慎太郎は智絵に向けて口を開く。
「俺が任務を遂行してた時、偶然会ったんだ。それでこの人たち、なんか敵に追われてるっぽくてさ。
身を隠せる場所が提供できないかと思って、智絵さんに相談しに来たんだ。」
「……なるほど。事情は分かった。」
智絵は手を組むと、真剣な顔で2人を見た。
「でも僕じゃなくても君たちには、強大な後ろ盾がいるじゃないか。」
「!!」
「……………。」
智絵の言葉に慎太郎は驚いた顔をし、名鳥たちは笑顔を消した。
「宇都宮家……、とても有名だよ。俺たちの業界じゃ特にね。
大昔から十二支を継いできた古い資産家。僕じゃなくても、その人たちに頼めばいいんじゃないの?」
「………それは、できません。」
「何故?」
智絵が目を細め彼らに問うと、名鳥は真っ直ぐした目でこう言い放つ。
「僕らを追っている敵が、その"宇都宮家"だからです。」
その言葉に、周りは一斉に静かになった。
名鳥は苦虫を潰したような顔で、怒りを殺しながら喋り続けた。
「宇都宮家は僕を……十二支を……、"金儲けの神様"としてしか見ていなかった。」
「!!」
慎太郎は名鳥の放った言葉に、強く反応する。
「神の象徴のように部屋に納められ、"酉"の十二支はそこで一生を終える。
外に出歩くのはもちろん、屋敷の中ですら自由に歩かせてもらえない。
僕は人の手をかりながら、生活しなければならなかった。」
名鳥の体型を見てみると、確かに少年といえど女性のように細すぎる身体をしていた。
「ただ淡々と人形のように世話をされ、死が近づくのを待つ…。
それが宇都宮家、十二支を与えられた者の定めなんです。」
智絵は一瞬驚いた顔をしていたが、すぐに冷静さを取り戻し、名鳥の話を聞いている。
「そんな生活に、僕は耐え切れなかった。……人として、自由に生きたいと思ってしまった。」
名鳥は勢いよく智絵たちに頭を下げた。
「初めて会ってこんな事言うのは、とても失礼なことだと分かってます……!!
でもお願いします!!どうか少しの間だけでいいので、僕たちを匿ってくださいっ!!」
その後すぐに葵も頭を下げる。
智絵は困ったようにひとつ溜息をついた。
「……智絵さん。」
慎太郎も2人に感化され、智絵にお願いする。
「俺からもお願いします。……2人を助けてくれませんか?」
「……慎太郎くん。」
「状況は違うけど、俺も昔同じような思いしてきたから……。」
慎太郎の澄んだ青い瞳が、真っ直ぐに見つめる。
「だからそんな彼らを、俺は見捨てることができない。」
そう言うと、智絵は困ったように笑みをこぼした。
「……しょうがないなぁ。
君にそんなお願いをされたら、俺断れないよ。」
「っ!!じゃあ!!」
「慎太郎くんには俺の仕事で恩があるしね。
いいよ。協力してあげる。」
智絵の言葉で、3人は喜びの表情を見せる。
「ただし、これだけは守って。」
智絵はズッシリとくる重い声で、3人は背筋を伸ばした。
「勝手な行動をせず、俺の指示をちゃんと聞くこと。いい?」
「は、はいっ…!!」
そう言うと、智絵はいつものようにニッコリと笑う。
「はい。じゃあ交渉成立ね。
……あぁ、それとーーー
「??」
智絵が満面の笑みで、隣に手を向けた。
「っ!?」
そこには、巨大な黒いオーラに纏った八月の姿が。
「八月くんが、
葵くんに言いたいことがあるそうです♡」
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