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十一。
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*
ーーーーーー
ーーー
ーーーその夜。
コツリ、コツリ……
黒神と契約を結んだ後、叔父は例の屋敷とは別に、違う屋敷へと帰っていた。
コツリ、コツリ……
そこは更に森の奥深く、
まるで廃墟のようなお城の中。
石畳でできた地下の階段を、叔父はランプを頼りに進んでいった。
たどり着いたのは、重厚な鉄の扉。
叔父は8桁の番号を入力し、カードをかざすと扉が開いた。
ガチャッ
ゆっくりと叔父は扉を押して開ける。
隙間から漏れる眩い光に、叔父は目を細めた。
ーーーそこは先ほどの廃墟とは違い、真新しく構築された子供部屋。
「………………………。」
柔らかい素材でできた床に、いくつもの可愛い人形が落ちている。
部屋の中心には、薄茶色の髪をした幼い子供の姿。
見た目は10才くらいで、周りには数人の使用人が。
髪の毛は長く、まるで女の子のようだった。
その華奢な後ろ姿に、叔父は一声かける。
「…………おい。」
叔父の言葉に反応し、子供は後ろを振り返った。
まるでこの掛け声が、彼の名前のように。
「あー……、う………?」
彼は叔父を見ると不思議そうな顔をして、声を出す。
その姿はまるで、言葉を知らない幼稚園児のように見えた。
10才児にしてはかなりの未発達な状態。
周りにいた使用人は、叔父の姿を見ると慌ててお辞儀をした。
「…………………。」
無表情で見つめる叔父に、子供は無意識にニコッと笑う。
(……コイツが、私を高見に登らせてくれる唯一の望み。)
叔父はしょうがないという風に目を閉じて、その中に入っていく。
(所詮は道具……。うまく操ってみせるさ。)
扉から手を離すと、明るい世界は再び闇に遮断される。
ガチャンッ
重い錠の音が、暗く湿った廊下に響いた。
その音はまるで、外との繋がりを絶った絶望の音。
ーーーーーー
ーーー
「ふふ、また始められるんだ。楽しみだなぁ。」
叔父が部屋を去った後、黒神は嬉しそうに椅子を揺らしながら鼻歌を歌う。
後ろにいる虎のお面をした男は、何も言わずただ立ち尽くしているだけ。
「ねぇ、"カイくん"。君も楽しみだろう?」
「………………………。」
黒神の問いにカイは答えず、微動だにしないで正面を向いている。
それを黒神は微かに笑って、机の横にあるチェス盤を自分の方へと移動させた。
ひとつの黒いチェスをとって、黒神は愉快そうに眺める。
「これで3度目だ。十二支や月華を狩るのは、本当に楽しい。1度目と2度目もいろんな収穫があったし、今回もいい収穫が得られればいいんだけど。」
再び黒神は虎のお面をしたカイを見る。
「カイくん。パートナーのネコ目くんに、宇都宮家の監視頼んでおいて。
裏で色々とやっておきたい事があるんだ。」
「………かしこまりました。」
「あとこれ、さっきのデータのコピー。」
彼は小さなUSBをカイに手渡した。
「ここに宇都宮家や頭月家の情報が入ってる。
別のフォルダに"僕の指示"があるから、ちゃんと確認して行動するんだよ。」
「はい。」
それを渡したあと、黒神は背もたれに寄りかかり腕を頭の後ろに組む。
「あーあ。本当に君のパートナー…ネコ目くん僕のこと嫌いだよね。
よほどあの時の事が許せないみたいだ。」
「……………………。」
「いや、それは君も同じか。」
黒神はカイのお面から見える白い短髪と、手に巻かれた包帯を見て目を細める。
「むしろ君の方が、僕のことを殺したいほど憎んでいる。」
「…………………。」
次の瞬間、黒神は子どもの様にあどけなく笑った。
「あはは。まー、それも今では不可能に近い話だけど。なんて言ったって、僕と君たちは"固い絆"で結ばれているからね。」
カイはその件に関して、一切の反応も示さない。
「………………。」
それに飽きた黒神は、手をひらひらと振ってカイの行動を促す。
「さ、じゃあ早く行っておいで。ネコ目くんにもよろしく伝えておいてね。
ーーー"カイくん"。」
そう言うと、カイは何も言わずにその場から姿を消した。
初めの位置にあるチェス盤を、彼は腕と顎を乗せ低い位置で眺める。
黒神の鼻歌が、閑散としたビルの部屋に響く。
「ーーーー♪ーーーー♪」
ーーー裏で暗躍しようとする月明かりの影。
ーーーそれは刻一刻と、侵食を広げていった。
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