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二十。
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*
ーーーーー
ーーー
電車の走る音が、冬護の視界を遮って流れていく。
彼は行く当てもなく、ただひたすらに木陰のある道を歩いていた。
ヴヴ……ヴヴ……
すると突然、冬護のスマホが震えだす。
「……………………。」
上着のポケットからスマホを取り出した冬護は、ホーム画面を開き名前を確認した。
"姫城 智絵"
それを見て一息ついた冬護は、画面をスライドし電話に出た。
「………はい。」
『あ、もしもし冬護?
慎太郎くんから内容聞いているだろうけど、今日の任務は放棄しないでね。』
「……は?」
唐突に訳の分からない話をし始める智絵に、冬護は眉を顰める。
『君が気に食わないのは分かってる。でも、どうか彼らを最後まで守ってあげてくれ。』
「……待て、それはどうゆうことだ。」
『は?』
「話が全く読めない。今日は何か任務があるのか?」
『…………………。』
話の内容が全く分かっていない冬護に、驚く智絵。
少し間をあけると、彼は声を低くして冬護に聞き返した。
『…………冬護。君は今、慎太郎くんたちと一緒にいるんだよね?』
「………………。」
彼の無言の回答に、智絵は大きくため息をついた。
『嘘でしょ………。君たち、この2週間半でなに喧嘩してるの。』
「……………………。」
『それじゃ今、名鳥くんを護衛してるのは慎太郎と葵くんだけなのか……。
どうしよう。その人数だけで、無事に目的地まで辿り着けるかどうか…。』
「!!」
その言葉を聞いた冬護は、スマホに縋り付き智絵から情報を聞き出そうとした。
「おい、智絵。アイツらはまだ俺たちの家にいるんじゃないのか?」
『……いや、おそらく外に出てると思う。
僕はさっき、慎太郎に作戦を立てたいから目的地まで来てくれと頼んだんだ。
今頃、僕が指定した場所に向かっているはず…。』
それを聞いて冬護は舌打ちをした。
ーーーー何か、嫌な予感がする……。
「智絵、今から俺もそこに向かう。だから目的地の場所を教えろ。」
心の内から広がる焦燥感に、冬護は次第に歩く速度が上がっていく。
珍しくすんなりと受け入れてくれた冬護に智絵は驚くが、すぐ心を入れ替えて場所を伝えた。
『君たちが住む町外れの廃墟だ。今からその住所を君の携帯に送る。』
「あぁ、頼む。」
廃墟の場所を確認した冬護は、自分の家からのルートを計算し、慎太郎たちと合流できるよう予測した。
そうと決まれば、彼は走り出して目的地に向かう。
『できれば僕達も、慎太郎たちのところに向かいたい。……だけど下手に動けば、周りに作戦を察知される可能性がある。……すまない。』
「ハッ、なんだよ。俺だけじゃ足りねぇって?」
路地を走りながら、彼は智絵の言葉を鼻で嘲笑った。
「……安心しろ。無事にアイツらを目的地にまで送り届けてやる。
だからそこで、いつものように笑いながら待ってろ。」
『……ありがとう、冬護。』
そう言うと冬護は智絵との通話を切った。
彼の頭の中で慎太郎の顔が掠める。
(今でもアイツのことは、胸糞悪いガキにしか見えねぇ……。)
だがな、お前がこの世からいなくなるのは許さない。
「……それができるのは、俺が死ぬ時だけだ。」
人気の無い道を走りながら、冬護は風と紛れるように呟いた。
ーーーーー
ーーー
慎太郎たちは、あれから順調に目的地まで向かっていた。
しかし目的地まであと半分という距離で、名鳥が体力を切らしてしまう。
やはり長い距離を走るということは、名鳥にとって相当キツイものだった。
「ごめん……っ、慎太郎……。あともう少しなのに……。」
「大丈夫。あともう少しなんだ。慌ててボロを出すより、全然マシだ。」
慎太郎は名鳥の状態を見て、彼の体力面も考えて作戦を実行しないといけないと感じた。
「なら私が名鳥様を背負い、目的地までお連れします。それならば問題ないでしょう。」
名鳥は普通の男性より体重が軽い。
葵にとっては、雲を運ぶようなものだった。
2人もそれで納得し、葵は名鳥を後ろに背負う。
ーーーその瞬間だった。
ヒュッ
突然慎太郎の頬に、勢いよく何かが掠める。
「!!!」
「あーー、惜しい。はずれたかぁ。」
呑気そうな声と共に現れたのは、制服姿の2人組。
「あれ、なんだ今回のターゲット写真より全然子供じゃん。俺たちと同い年?」
「あら、本当だ〜。すごい親近感。友達になれるかもしれない笑。なんちゃって。」
制服はブレザーを着用しているが、顔は黒いマスクを被っているため声しか聞こえない。
その内の1人である男が、葵に向かって指さした。
「強そうなの、あそこにいる兄ちゃんだけじゃん。なんだ、高額バイトの割に楽勝?」
カチリッ
男が手元にあるレバー式の取っ手を引くと、先ほどの刃物がワイヤーによって戻ってくる。
カチャンッ
吸い込まれるように、その刃物は取っ手に嵌った。
慎太郎の頬から、一筋の赤が流れ落ちる。
「アンタら……狩人か……。」
手の甲で流れた血を拭い、鋭い目で睨みつけた。
女がメガネを持ち上げて、首をかしげる。
「え?狩人?なにそのダサいあだ名。」
「俺たち、ただ人を殺すアルバイトしてる学生ですけどー。」
男の方はケラケラと笑いながら、先ほど合体した刃物をクルクルと回した。
「!?」
それを聞いた慎太郎たちは、信じられない目で彼らを見る。
「お前らを殺すとね、すっごい金がもらえんの!それは俺たちがこの18年間見た事もないくらいの金額!」
手のひらを天に大きく広げ、嬉しそうにしゃべる男に慎太郎は冷や汗を流した。
「狩人じゃないなら……。アンタら……、なんで人を殺すアルバイトなんてしてんだよ……。」
「えぇ??だってさ、普通に働くと全然刺激的じゃないしー面白くないしー疲れるしー。」
指を折りながら、呑気に話す男。
その異常な精神が、慎太郎たちにとって信じられなかった。
「あ、でも1番の理由はお金かな!!」
「そうそう!そうなのよ!」
そう言って女は、背中にあった大きなリュックから黒いレバー式の金棒を取り出す。
「これさー、アルバイト先の人に貰ったんだけど。簡単に人が殺せるんだって。」
地面にそれを叩きつけると、ガキンッッと大きな音が鳴った。
男は刃物をスルリと撫でる。
「だからさぁ、私たちのために死んでくれない?」
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