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二十二。
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*
「っ、」
片腕に痛みが生じるが、慎太郎は一瞬できた隙を見逃さなかった。
金棒を片手で掴み、それを女から引き離す。
「あっ!?」
女の手元から離れた金棒は鈍い音を立てて、地面に転がってしまった。
手ぶらになってしまった女に、慎太郎は拳を打ち込もうとする。
「ちょっと待って!!わたしっ……女……!!」
弱腰になった女は両手を前に差し出し、彼の攻撃を止めさせようとした。
「男も女も、戦う時になったら関係ねーよ!!」
「ぐふっ……!?」
あまりのパンチ力に女の身体が吹っ飛んだ。
そして壁に頭を強打して気絶してしまう。
地面に転がった女を、慎太郎は疲れた顔で見下ろした。
「……自分の不利になった時、女を使ったらお終いだぞ。お姉さん。」
そう言って慎太郎は踵を返し、未だ意識を保っている男に近づいた。
「ひっ……!」
先ほどの威勢のよかった男の姿はなく、彼は青ざめながら後ずさる。
「……なぁ、アンタ。俺たちを殺すことをアルバイトって言ってたよな?
それを指示したのは誰?」
「それは、……えっと……何も知りません。」
「は?」
「ひっ……!だ、だって俺たちネットの掲示板でやりとりしてただけだし……!相手の顔なんて全然知らない!」
「ネットの掲示板……?」
「じゃあその武器はどうやって入手した。」
葵たちも男に近付いて、事情を聞くと男は縮こまりながら話し始める。
「ぶ、武器は指示された場所にダンボールで置かれてました……。」
そこまで言うと、男は思い出したかのようにハッと顔を上げた。
「あ、でもその中に妙な紙が……。」
「妙な紙?」
男のポケットを探ると、その中に小さな紙が入っていた。
「黒い…三日月?」
その紙には黒の三日月が描かれていた。
意味のわからない紙だったが、一応証拠として慎太郎はポケットに入れる。
「じゃあ、あとネットの掲示板は?」
男の携帯を操作し検索すると、予想通りその掲示板は既に封鎖されていた。
唯一手に入れたのは、この黒い三日月の紙だけ。
「……とりあえず、彼らだけでも持ち帰りましょう。智絵さんなら、何が聞き出せるかもしれない。」
「そうですね。」
慎太郎と葵はそう話し合い、2人を智絵の元に持ち帰ろうとした。
ーーーしかし、
「この人たち、どうやって目的地まで運びます…?」
「そうですね……。名鳥様を含めると、私は1人しか担げません。慎太郎くんは……ちょっと難しいですよね。」
男女の図体は慎太郎より大きく、1人を担ぐにしろ持ち運びは困難であった。
すると彼らの後ろから、いきなり怒号が飛ぶ。
「おい!!やっと見つけたぞ!!この雑魚!!」
「え………。」
聞き覚えのあるその声に、慎太郎が振り向くとそこには息を切らした冬護が立っていた。
「……と、冬護さん…?」
あまりの驚きに、慎太郎から無意識に名前が溢れる。
冬護は苛立った顔で舌打ちし、慎太郎のそばまで寄ってきた。
「な、なんでここにいるんですか。」
そう言うと、冬護は慎太郎の怪我に気づき腕を持ち上げる。
バッ!!
「うぉあっ!?」
勢いよく袖を巻くられると、そこには青紫色に変色した腕があった。
さらに慎太郎の頬に刻まれた赤い傷を見て、冬護の顔はどんどん不機嫌になっていく。
「な、なんですか!?いきなり!!
何の変哲も無いただの打撲ですよ!いつもみてるでしょう!?」
「…………………。」
様子が明らかにおかしい冬護に、慎太郎は困惑するばかりだった。
冬護は何も言わず慎太郎の腕を離すと、地面に転がった男女2人を見る。
「………どっちだ。」
「は?」
「お前の顔と腕に傷つけた奴だよ。両方か?再起不能になるまで痛めつけてやる。」
殺気立つ冬護に、意識がある男は何も声が出ず身体を小刻みに震わせた。
「い、いやいやいや!!今さら何言ってるんですか!?貴方俺が今日よりボロボロになった日、普通にしてたじゃないですか!」
「……知らねーよ。ただ今日はムカつくんだよ。」
「そんなめちゃくちゃな……。」
慎太郎が必死に冬護を説得させようとしていると、葵がそっと近づいてくる。
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