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二十三。
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*
「稲月さん、少し落ち着きましょう。」
「あ"?」
「貴方の怒る気持ちもわかります。しかしこの人たちを瀕死の状態まで痛めつけても何も変わりません。」
葵は地面に転がった2人を見る。
「まずは黒幕の正体を暴かなければ。そのために2人を智絵さんの元へ連れて行きます。
どうか手伝っていただけませんか?」
「…………………。」
それを聞いて冬護は少し考えた後、男の方へ足を向けた。
「………え?」
バコッ!!
「!?」
するといきなり彼は男の頭を蹴り上げる。
頭に大きな衝撃を受けた男は、そのまま地面に倒れこんだ。
「………わぁ。」
名鳥が口を抑えて声を上げると、冬護は男女の身体を担ぎ上げる。
「途中で暴れられても困るからな。チンタラしてないで、早く智絵のところへ行くぞ。」
そう言って冬護は慎太郎たちの前を通り過ぎようとした。
ーーーその時、
「……………………。」
彼は一瞬立ち止まり慎太郎をジッと見つめる。
「え、……あの……?」
その意図が分からない慎太郎は、狼狽えながら冬護の視線を見つめ返した。
「………フン。」
しかし冬護は何も言わず鼻で笑った後、慎太郎の側を通り過ぎた。
「……………は?」
訳がわからない慎太郎は、助けを求めて名鳥と葵に顔を向ける。
2人はニコニコと笑いながら、「いい兆候なんじゃない?」とだけ言った。
ーーーーーあれから数十分後。
慎太郎たちはようやく目的地にたどり着き、町外れにある廃墟を見つけた。
「………ここか。」
慎太郎はそう言って、錆びた茶色い扉を開ける。
ギギギ……と鈍い金属音をたてながら、入り口がどんどん開けていく。
ガチャン……
やがて完全に開け放たれた入り口に、慎太郎は恐る恐る入っていった。
それに続いて冬護、名鳥たちと続いていく。
「慎太郎!!」
「!!!」
待ち望んだその声に、慎太郎たちは奥の方に目を向けた。
「智絵さん!」
そこにいたのは、スーツ姿の智絵と八月だった。
智絵は慎太郎たちの無事を確認して、ホッと息をつく。
「……よかった。みんな無事だったんだね。冬護とも合流できたみたいだし。」
「完全に無事とはいかなかったけどな。」
「え?」
冬護はそう言うと、智絵たちの前に2人の身柄を投げ出した。
ドサッ
「コイツらは、俺が合流する前に襲ってきた"狩人もどき"だ。」
「!!」
「……俺が来る前に決着はついていたが、その戦いでこの雑魚が腕に怪我を負った。」
冬護が親指で慎太郎を指差すと、彼はあたふたと慌てふためく。
「いや、でもそんな大した怪我じゃ…!」
すると智絵は急いで慎太郎の元へ行き、手を差し出した。
「慎太郎。腕を見せて。」
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