アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
二十五。
-
*
智絵の言葉に、ポカンとする3人。
冬護は何も反応せず、八月はただ地図を見つめているだけだ。
「……なんか、掴みどころのない作戦名ですね。」
「え、そう?もっとカッコいい名前が良かった?でも作戦名なんて普通こんなもんでしょ。」
「てきとーてきとー。」笑顔でそう言う智絵に、苦笑いを返すしかない3人。
「それで、作戦内容なんだけど……。」
そう言おうとした智絵は、ピタリと動きを止める。
ふと後ろを振り向いて、隅に倒れている男女2人を見た。
「そう言えば、君達が連れてきたあの2人。本当に気を失ってるんだっけ?」
智絵がそう言うと、八月がすぐに行動する。
バキッガコッ!!
再度2人を軽く殴り、本当に気を失っているか確認した。
「………………。」
気を失っていることを確認した八月は、念のため2人を奥のトイレに投げ込み鍵を閉める。
バタンッ
カチリッ
「「………………。」」
「これで大丈夫かと思います。」
「そ?ありがとう八月。」
その工程を見た冬護含め4人は、八月だけは喧嘩を売らないようにしようと心に決めた。
「それでね、作戦内容なんだけど………。
簡単に言えば僕たちが囮になって、混乱している宇都宮家の目を欺き、船で名鳥くんたちを海外に逃亡させる作戦だ。」
智絵は地図をなぞりながら、その経路を説明していく。
「僕らが目指すのは、ここから30キロ離れたこの港。
本当はもう少し近い港があるんだけど、道が一本しかなくて短絡すぎる。
もっと複雑化したこっちの経路の方が、敵に見つからないはずだ。」
そして彼は机の上にある物を2つおいた。
それはカツラで、名鳥と同じ精巧な髪型をしている。
「これは港までたどり着くための必須道具。」
「カツラ?」
「そう。慎太郎と八月、2人は名鳥くんと同じくらいの背丈だよね?
2人でこのカツラをかぶって、名鳥くんのフリをするんだ。」
「!!」
智絵の言葉に名鳥はヒュッと息を呑んだ。
「複雑な道を選んだのは、それが理由だよ。混乱している宇都宮家は、たとえ囮だったとしても情報が欲しいはず。
殺さず生かして、情報を得ようとするだろう。
慎太郎と八月は、もし万が一作戦がバレた時の囮だ。わざと見つかって逃亡の時間稼ぎをして欲しい。」
「なるほど。じゃあ俺と八月さんは名鳥になりきって逃げるわけか。」
「そうゆうこと。」
名鳥の異変に気づかない慎太郎と智絵は、そのまま話を進めていく。
顔色が悪くなった名鳥は、震える声で智絵に語りかけた。
「……ま、待ってください智絵さん。慎太郎と八月さんが僕の囮になるだなんて……。それだと慎太郎や八月さんの身に危険が生じます……!」
ニッと智絵は自信ありげに微笑んだ。
「大丈夫。君が思っているより、2人は遥かに強いから。宇都宮家の兵士よりずっとね。
それに慎太郎くんには、新しい武器もある。」
「……え?」
そう言うと、八月は奥から黒いケースを持ってくる。
ーーーそれは、至って普通のギターケースだった。
それを八月は慎太郎の目の前におく。
「はい、慎太郎くん。これが君の新しい武器だ。」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
27 / 58