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三十。
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*
外に出ると同時に、6人は一斉に走り出した。
目的地である港には、智絵が予め手配した船がある。
もし宇都宮家に目的地がばれたとしても、いくつかダミーを用意してあるので簡単には見抜けない。
走りながら、智絵は心の中で考える。
(予想できる不安要素は、全て取り除いた。
後は無事に港に着ければ、僕らの勝ちだ。)
ーーーーたとえ宇都宮家に、僕たちの場所がバレていたとしても。
「……上等だ。受けて立ってやる。」
そのための囮。
そのための僕らだ。
ーーーーーーーー
ーーーーー
「………うっ………。」
廃墟で気絶していた男女2人組は、慎太郎たちが動き出した後意識を取り戻す。
縄で縛られており、身動き取れないことを知った女は足をバタつかせた。
「なぁにこれーー!!身体中痛いし、動けないし最悪なんですけどぉぉ!!」
ギャーギャー騒ぐ女に、男はため息をつく。
「……それは俺も同じだよ。クソ、見誤った。アイツら思ったより強すぎだよ。」
「どーすんのよ、この縄。切れんの?」
「それは問題ない。幸いなことに、俺たちの武器は没収されてないみたいだ。」
男は袖口から、黒いナイフを取り出した。
「さっさとこの縄切って逃げよう。この怪我じゃろくに戦えない。
このバイトはヤバすぎた。とりあえずあの人たちに連絡だけして、僕らの手に入れた情報だけでも伝えよう。」
「だいじょーうぶ!その必要はないぜーー!」
「っ!?」
突然聞こえた明るい声に、男女2人は身体をビクつかせる。
2人の前に現れたのは、金髪の少年と青髪の少年。
彼らと面識は全くない。
しかし彼らから発せられる恐ろしいオーラに、男女2人は高額バイトの依頼人だと理解した。
その瞬間2人は顔を青ざめ、血の気が一気に引く。
(……まさか、作戦が失敗したから俺たちを殺しに……?)
彼らの脳裏に"死"という文字が浮かんだ。
青髪の少年が銀フレームの眼鏡を正す。
「お二人共、お仕事ご苦労様でした。これで私たちは思う存分、彼らと戦うことができます。」
「えっ……?」
思っていたものと真逆な言葉に、2人は目が点になった。
「貴方たちは立派に役目を果たしました。これでアルバイトは終わりです。」
「そーゆーこと!おつかさま!」
それを聞いて、2人はホッと胸を撫で下ろす。
金髪の少年と青髪の少年は、笑顔のまま2人に近づいた。
そして2人から、ワイヤーのついた黒のナイフと黒レバーのついた金棒を回収する。
「とりあえずこれは回収させていただきます。これは元々、"私たち"のものなので。」
「え、あっ……。」
男が縄を切る前に、金髪の少年と青髪の少年は彼らの武器を奪ってしまった。
「これはほんの少しですが報酬です。受け取ってください。」
バサバサッ
最後に青髪の少年は、2人に札束をいくつか地面に落とす。
「っ!!」
それは普段見ることのない札束の量。
2人は地面に釘付けになった。
「す、すげぇ……。」
「や、やったよ!これで私たち、好きなもの買い放題じゃん!」
興奮する2人に、青髪の少年はニコリと笑う。
「では、お疲れ様でした。」
ーーースパンッ!!
その瞬間、青髪の少年は見えない速さでナイフを振りかざした。
ワイヤーのついた刃物が、綺麗な曲線を描いて男女2人の首筋を通り抜ける。
「………えっ?」
女は呆然とした声が、廃墟に響いた。
一瞬にして、2人の首筋に赤い血飛沫が上がる。
暗くなっていく視界の中、男が最後目にしたのは彼らの冷たい表情だった。
(なん、で………。)
バタンッ
汚いコンクリートの上に、真っ赤な血が染み渡るように広がっていく。
動かなくなった2人の側には、血みどろになった札束が。
金髪の少年はそれを平然と見つめた。
「相変わらず、ひでーことすんな。トウヤ。金もったいねーじゃん。」
「いいんですよ。ミカヅキ。これは彼らにとって、最後の餞別なんですから。」
トウヤは白い手袋をつけた手で、眼鏡をクイッと上げる。
「それに目的を達成した駒には、いい思いをさせて死なせたいんです。」
「けっきょく殺すのに?」
「私たちの情報が漏れてしまっては困りますからね。念のために。」
「ふーーん。トウヤは用意周到だな。」
ミカヅキは黒の金棒を持って、ブンブン振り回す。
「まーー俺は殺しあいができればそれでいいや!」
ガキンッッ!!と彼は地面を強く金棒を叩きつけた。
その瞬間、固いコンクリートの地面に大きな亀裂が走る。
「あーー!早くぶち殺してぇーー!ゾクゾクしてーー!」
ミカヅキの遠吠えが廃墟に大きく響いた。
トウヤは血のついたナイフを拭き、汚れたハンカチを胸ポケットに仕舞う。
「そうですね。準備も整ったところですし、そろそろ彼らを追いかけましょうか。
……もうすぐ"私たちの目的地"に着くようですから。」
口元に薄っすら浮かべたトウヤの笑みは、不気味なほど恐ろしいものだった。
手に持ったナイフをまるで手品のように消して、トウヤたちは歩き出す。
「あの紙は見てくれましたかね…。」
「??」
ボソリと言い放ったトウヤの言葉に、ミカヅキは首を傾げた。
「さぁ、急ぎましょう。面白いのは、これからですよ。」
そしてトウヤたちは、また一瞬にして姿を消した。
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