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三十一。
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その頃、慎太郎たちは目的地の港に向かって走っていた。
彼らの周りに他の気配がないか探るが、特にこれといった気配はない。
ーーー走り出してから、だいぶ時間が経ってしまった。
智絵、名鳥の息遣いが上がっている。
「……はぁ、とりあえずここまでは順調だ。
まだ気づかれてないのか、走り出してから宇都宮家に関係する人間はいなかったね。」
息を整え、智絵は5人に話しかけた。
「しかし油断は禁物です。いつ何時、奴らに気づかれるか分かりません。」
八月の言葉に、智絵はコクンと頷く。
「……そうだね。一先ず、何もないうちに休息をとろう。」
智絵は息が絶え絶えな名鳥を見て、身体を休めることを提案した。
「この近くの廃墟ビルがある。あそこなら簡単にバレることはないだろう。
一応僕の所有物だから、管理人に怒られることもないしね。」
その言葉に、慎太郎は賛成した。
「そうですね。」
名鳥の体力も考慮して、6人は一旦ビルの廃墟で休むことにする。
見張りを葵、冬護、八月がすることになった。
彼らはまだ体力の半分も使っていない。
コンクリートだらけの壁と床。
そこに陽は入らず、薄暗いところだった。
息が上がる名鳥に、慎太郎は肩に手を置く。
「名鳥、平気か?」
「う、うん……大丈夫。」
慎太郎は持ってきたリュックから、水のペットボトルを取り出し名鳥に渡した。
「はい、これ水。少しずつ飲むんだぞ。」
「ありがとう。」
名鳥は優しく笑って、その水を飲む。
智絵は地図を取り出して、現在地を指差した。
「今僕たちがいるところは此処だから……、港まであと18kmといったところか。」
八月は自らの顎を触って、考えるように目を細めた。
「……はい。しかしここまでスムーズに行くと逆に怖いですね。」
「もしかしたら、港で待ち伏せとかしてるかもな。」
「いや、それは無い。港には僕の偵察隊を配置させてある。もし誰か来たら、携帯に連絡がいくはずだ。」
「じゃあ、まだ気づかれてねーのか。」
「そうなるね。これ幸いと言うべきか……。」
智絵と冬護が話していると、慎太郎はズボンのポケットに手を突っ込んだ。
カサリッ
すると彼の指先に、小さく折りたたまれた紙の感触がする。
「あ。」
「??」
その瞬間、慎太郎は思い出したように声をあげた。
突然の声に、全員が慎太郎の方に向く。
「??どうしたの、慎太郎。」
「智絵さん。渡すの遅れちゃったんですけど、これ一応見てもらってもいいですか?」
ズボンに入っていた紙を広げて、慎太郎はそれを智絵に見せた。
「………?」
ーーーーー黒い三日月
そのマークを見て、智絵の顔は首を傾げる。
全く見た事のないマークなのに、心の中では何故か嫌な予感がした。
「……慎太郎、これを一体どこで……。」
「あの男女2人が持っていました。高額アルバイトの依頼人が武器と一緒にくれたとかで……。
すみません、見つけたらすぐに報告すべきだったんですけど……。」
ドクンッ、ドクンッ
心拍数がどんどん激しくなっていく。
何故だろう、この焼け付くような胸騒ぎは。
"今すぐ、ここを出て行かないと"
その言葉だけが、智絵の頭の中を埋め尽くす。
黒い三日月のマークから、目が離せない。
「っ、慎太郎!名鳥くん!!」
「!?」
智絵は額に汗をかきながら、2人の名前を呼んだ。
(すごく、嫌な予感がする!!!)
「今すぐここから離れよう!急いで目的地に向かうんだ!!」
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