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三十五。
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「おい、そこの短髪。メガネのガキはお前に任せていいのか。」
冬護はトウヤを拘束している葵に問いかける。
「……あぁ。すぐに片付けられる。」
ググッと、葵はトウヤの首に力を入れた。
「この首をへし折られたくなければ答えろ。……宇都宮家に、十二支の後継者となれる赤子はいるのか。」
「……………っ、さあね。それはお答えできないと言っているでしょう。」
答えようとしないトウヤに、葵は顔を歪ませる。
「十二支を継げるのは、名前のない人間だけ。名前のない赤子は、俺の知る限り誰もいない。
なら、彼の隠し子か何かいるのか?」
「………フフ、何故そんなに知りたいんですか。」
「ただ知りたいだけだ。……もう二度と、名鳥様のような子どもを出したくないからな。」
「なるほど。そうですか……フフッ。」
「………なにがおかしい。」
「いや……。あなたの大事な名鳥様より、もっと可哀想な子どもがいたというのに。
名鳥様が一番可哀想だと思うあなたが、面白くて面白くて……。」
彼の笑い声はとても不気味で、全体に響いていく。
慎太郎もその場に固まり、トウヤの言葉を聞いていた。
「知っていましたか?
宇都宮家の欲のために生まれ、名前も与えられず、地下でずっと閉じ込められている"子ども"の存在を。」
「っ!!!」
葵は目を見開き、拘束する手を一瞬緩めてしまう。
その隙を、トウヤは見逃さなかった。
カチャッ
彼はスーツの裾から、黒いナイフを取り出す。
「隙ありです。」
ビュッッ
黒のレバーを引き、葵の腕へと突きつけられた刃。
ザクッ
「っ、」
葵はすぐさま反応して腕を避けたが、僅かに攻撃を食らってしまい切り傷が残る。
葵は距離を置いて、負傷した腕を掴んだ。
その手の隙間から、赤い血が止めどなく溢れ出す。
「惜しい。後もう少しで神経を切ったのに。」
「っ、葵さん!!」
バキィッッ
「っ、」
「はーーい!君は俺の相手だろー!」
葵の元に向かおうとした慎太郎だったが、ミカヅキにそれを阻まれてしまった。
「はいっ!!クリーンヒットォ!!」
慎太郎の顔面を狙ったミカヅキに冬護はいち早く反応する。
慎太郎の服を引っ張り、地面に投げ出した。
ガキンッッ
バランスを崩した慎太郎に、その攻撃は当たることはない。
代わりに地面が砕け、慎太郎は床に転がった。
ミカヅキは冬護の一瞬の行動に、口笛を吹く。
冬護は空いたミカヅキの顔に蹴りをくらわせた。
バキッッ
直撃する冬護の攻撃。
しかしミカヅキはビクともせず、何ともない顔で笑った。
「これだけ?」
ビュンッッ
ミカヅキは金棒を振り上げるが、それは当たることなく冬護は避ける。
「……なるほど。普通の体術は通じねぇのか。」
「効かない効かなーい!武器を使わないと、俺は死なねーよ!」
そう口にした瞬間、後ろから慎太郎が飛んで黒剣を振り上げていた。
「オラァッ!!」
全力で剣を振り下ろせば、ミカヅキは後ろを振り向かずとも素手で刃を受け止めた。
「はい、残念!」
ブンッッ
ミカヅキは慎太郎の身体ごと、剣を投げ飛ばした。
「軽い軽い!!こんなんじゃ俺を倒せねーぜ!!」
片腕をブンブンと回しながら、ミカヅキは高らかに笑う。
一方葵はトウヤと体術を交わしながら、この空間の地形を見ていた。
廃墟を支えているいくつもの柱。
壁はいつくか存在し、コンクリートが砕け鉄筋が剥き出しになっているところがいくつかある。
それを計算しながら、葵はトウヤに気づかれないようトラップを仕掛けていった。
葵の家系である頭月家は、罠を仕掛ける技術"トラッパー"として秀でている。
相手を上手く欺き、トラップを仕掛け殺してきたのだ。
特に葵は優秀で、罠を作るのも得意だった。
カチッ
「……おや?」
トウヤが踏んだ地面に、プラスチックが割れたような音がする。
バァンッ
それは小さなプラスチック爆弾で、あまり爆発規模のない地雷になっていた。
少なくとも足裏を傷つけ、歩きにくくさせることはできる。
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