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三十八。
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*
ーーーその数十分前、慎太郎たちはミカヅキとの戦闘に苦戦していた。
何度打撃を加えようと、彼の身体には傷1つ付かない。
いや、付かないのではなく感じないのだ。
人間の構造は完璧に把握している慎太郎たち。
攻撃は的確に与えている。感触も感じるが、それはミカヅキには通用してるとは思えない。
(……まさか改造されているのか。身体を……。)
荒くなった息を整えながら、慎太郎はミカヅキを睨んだ。
「うぉぉぉ!もっと暴れてーーーー!!」
ミカヅキは興奮が収まらず、どこ構わず壁を破壊している。
慎太郎の身体は既に何回か攻撃を受けてボロボロだ。
対して冬護は息を乱さず、冷静に相手の攻撃を躱して考えている。
「……まるで筋肉バカだな。ああ言うタイプには虫酸が走る。」
「……ど、どうすればあの人を止められるんでしょうか……。」
「………答えは簡単だ。武器を使い、確実に奴を殺すしかない。」
そう言って、冬護は地面に落ちたリュックを探った。
そして取り出されたのは、黒い皮でてきた高価なケース。
それを開けると、銀色のフレームをした2丁拳銃が綺麗に収められていた。
俺を見て、冬護は目を細める。
「……久しぶりに使うな。何年ぶりだろうか。」
冬護はその重厚に出来た銃を握り、装備した。
「おい、雑魚。お前も早くレバーを引いてギアを上げろ。その剣の能力使わなきゃ、アイツ倒せねぇぞ。」
「……でも、」
そんな事したら、あの男の身体は簡単に斬り裂けてしまう。
人体を切り落とすなど、今の慎太郎には出来なかった。
「これはただの喧嘩じゃねぇ。命を懸けた戦いだぞ、二条 慎太郎。」
「……っ!!」
その言葉に慎太郎は目を見開いた。
冬護は馬鹿にした言葉は一切使っていない。
慎太郎のことを"雑魚"と呼ばないのは、彼は本気で言っているということだ。
「お前がそんな甘い考えをすれば、人間は簡単に命を落とす。
あの金髪は本気で俺たちを殺しにきてる。なら、本気で対抗しなければお前は死ぬんだぞ。」
「……っ、」
ミカヅキは楽しそうに笑いながら、2人に標準を定める。
赤く濡れた唇を、ミカヅキはぺろりと舐めた。
「現実を受け入れろ、ニ条 慎太郎。……そして本気で戦え。あのクソ鳥たちを逃がしたいならな。」
(……名鳥、葵さん……。)
グッと慎太郎は手袋をつけた手で握り締める。
(そうだ、戦わないと。今までだって、誰も助けてくれなかったじゃないか。)
この世界に生き残るために、俺は一生懸命この運命と向き合ってきたんだ。
狩人を狩る時だって、生きるか死ぬかの戦いだった。
じゃあこの戦いだって同じだろ。
"殺すか、殺させるか"
殺されれば、名鳥たちだって死んでしまうんだ。
そうなれば、名鳥は空に羽ばたくことなく命を落としてしまうんだぞ。
(そんなの、絶対にさせてなるものか……!!)
「……そうですよね。……本気で戦わなきゃ、俺たちは生き残れない…!」
慎太郎の目に強い意志が宿った。
カチャッ
黒剣のレバーを引き、ギアを1段階上げる。
カチカチカチッ
歯車が回るような音が持ち手の中で聞こえた。
「……お?」
ミカヅキは興味津々な目で、慎太郎のことを見つめた。
慎太郎の持つ黒剣は、灼熱を纏う剣に変わる。
しかしその色はまだ鈍く、赤銅に近い色をしている。
(ギアは全部で3段階。……まずは1段階、これは人間の皮膚を火傷させるくらいの温度だ。)
これでミカヅキは、素手でこの剣を掴めないだろう。
「……冬護さん。俺が何とかして彼の隙をつくります。貴方はその瞬間、躊躇うことなく引き金を引いてください。」
「………それは、お前を貫くことになってもか?」
その言葉に、慎太郎は冷や汗をかきながら口角を上げた。
「はい。」
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