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四十七。
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*
「お前……っ!!」
慎太郎は目を鋭くさせ、トウヤを殺そうとするが、さっきの攻撃で彼の脚は動かなくなった。
「っ、」
「おやおや、そんなに無茶しては身体の毒ですよ。」
クスクスと歪んだ眼鏡で笑うトウヤに、慎太郎は叫んだ
「この野郎…なんでお前が生きてるんだっ!!」
「それは、僕が彼との戦いで勝ったからです。」
「……!?」
「もちろん貴方が倒したと思ったミカヅキも、まだ生きていますよ。あの攻撃じゃ、僕たちを殺せない。」
「嘘、だ………。」
「本当ですよ。まぁ、ミカヅキの場合かなり重症ですが。」
絶望で跪いていた慎太郎に、トウヤが笑顔で見下ろした。
「残念でしたね。あの男の死は、無駄というわけです。」
「ーーーーーー。」
「貴方たちの負けですよ。」
そう言って、
トウヤは両腕を失った少女の元へと行く。
彼女の腕を布で止血しながら、トウヤは喋り続けた。
「ああ、そうだ。これ以上余計なことしない方がいいですよ。」
切断部分に布を巻きつけ強く縛る。
「なんせ僕らのスナイパーが、常に銃口を貴方たちに向けていますから。
…下手なことをすれば、頭の脳天を打たれますよ。」
そして彼は、少女が落とした両腕を拾い上げた。
「では任務が終わったので、僕たちはここで失礼します。」
慎太郎たちは、トウヤたちが去るのをただ見ているしかない。
「ほら、マチヨイ。行きますよ。」
そう呼ばれた少女は、苦渋の表情を浮かべながら立ち上がった。
トウヤはそれを担ぎ上げ、最後に慎太郎に向けてこう言い放つ。
「さようなら、二条 辰太郎。……辰の名を持ってしまった、哀れな少年。」
そう言って、彼らは姿を消してしまった。
ーーーーーーー
ーーーー
静かになった港。
綺麗な大空を背景に、赤い血溜まりと白い羽が異様さを醸し出す。
死んだ名鳥のそばに寄り添いながら、慎太郎はただ無言に膝をついていた。
「……………………なんで、」
彼の青い瞳に、死んだ名鳥の姿が映し出される。
閑散とした港から、緩やかな風が吹き込んだ。
血で渇いた名鳥の髪が、小さく揺れる。
言いようのない怒りが、悔しさが、慎太郎の心の中で急速に込み上げてきた。
「ーーーーーッッ」
言葉にならない息を吸い込み、彼は天を仰ぐ。
「どうして…っ……、」
喉が枯れたような声で、慎太郎は言葉を発した。
頭の中で、いろんな感情がぶつかり合う。
どうして、過酷な環境にいる俺たちが…。
どうして、自由な外を望んだ名鳥たちが……。
ーーー殺されなきゃいけないんだ。
「ーーーーーッ」
次の瞬間慎太郎の脳裏に、事務所で見た写真がフラッシュバックする。
それは制服を着た赤髪の少年と、同じ格好をした金髪の青年が歩いている写真。
ーーー彼らが楽しそうに、仲睦まじく歩く写真を慎太郎は思い出してしまった。
"なんでアイツらは、
幸せそうに生活しているんだ"
「ーーーーーーーッッ、」
そう思った瞬間、慎太郎の内側にあった闇が一気に溢れ出す。
張り裂けそうな声で、慎太郎は空に向かって叫んだ。
「どうして俺たちだけ、
こんな目に合わなきゃいけないんだよ…っ…!!!」
地面に跪き、天を仰いで絶望に明け暮れる慎太郎。
その腕や左頬には、火傷の痕がこびりついていた。
曝け出された肌は全て、切り傷や痣が存在する。
その哀れな姿を智絵や八月、冬護は見てることしか出来なかった。
慎太郎の焼けた頬に、一筋の涙が流れ落ちる。
正気を失った空間で、
4人は暫くその場から動けなかった。
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