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「このことはもちろん誰にもいいませんから。こうしてまたお相手してくれませんか?」
渡瀬先生は悪気のない笑顔で翌朝ゆうにそういった。
「それは脅しですか?」
ゆうは大きく溜息をつく。
「脅しだなんてっ私はただ気持ちのいいことが好きなだけですから。もしかして決まったお相手でも?」
からからと笑いながら問われたその質問に、ゆうはまさとの顔を思い浮かべた。
決まった相手というわけではないが、まさと以上に好きになる人はおそらく今後も現れないだろう。
なんせ十年だ。
十年もの間まさとが俺の一番を占領し続けている。
万が一にでもまさとと付き合うことができたなら、こんな風に流れに身を任せて一夜だけの関係を結ぶなど絶対にあり得ない。
ゆうの心が僅かに沈む。
「想い人はいますけどね…気持ちが通うことがこの先あるかどうか…」
そう自嘲気味に呟いて、ゆうは渡瀬先生が淹れてくれた自慢のコーヒーを啜った。
深い香りが身体を満たす。
「お相手はノン気ですか?」
「と思ってたんですけどね、久しぶりに再会したらイケメンを連れてました。しかも外国人」
「それはまた…」
何でこんなことを渡瀬先生に話しているのかわからなかった。
でも身体を繋ぐと嫌な相手でなければ少なからず情が湧く。
心が少し近づいたような気になるのだ。
身体を売るようなことをしてきて、好きでもない相手に身体を開いて散々傷ついて。
それでも色んな人と付き合ったりしていく内に考えも少しずつだが変わってきた。
セックスはコミュニケーションの一部だと思えるようになってきたのだ。
決してまさとと離れたからといって自暴自棄になったわけではない。
女の人が好きになれない以上、こうして生きていくのが生きやすいと気づいたのである。
まさとを好きな気持ちに変わりはないが、まさとのいない世界で生きていかなくてはいけないのもこれまた事実なのだ。
もしかするとこれは開き直りにも近い感情かもしれない。
「それで?ゆう先生はその外国人と闘うんですか?」
「闘う?いや闘うってそんな…そもそも自分はリングにも上がっていないですから」
「でもその彼が好きなんでしょう?」
「えぇ、まぁ…」
十年待った。
久しぶりにまさとの姿を見て、やっぱり自分はまさとが好きなのだと確信した。
「それなら早く決着をつけてしまったらいいですよ。私はゆう先生のためならいつでも身体を空けておきますから」
「ははは。ありがとうございます。確かに昨晩は気持ち良かったです。あんなに乱れたのは久しぶりでした。けど…関係を続けるかどうかはもう少し考えます」
「意外と真面目なんですね」
渡瀬先生を見ると、言葉とは裏腹な嫌味のない笑顔が返ってきた。
だいぶ強引で変態ではあるが、どうやら悪い人ではななさそうだとその笑顔を見て思う。
「また…話をきいてもらえませんか?」
渡瀬先生の双眸が優しく細められる。
「えぇもちろんですよ。慰める準備は万全ですから」
ゆうはその答えに、心を休めてふふっと小さく笑った。
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