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微笑みは僅かな熱に変わって
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「えおえお?」
名前を呼ばれた背の高い茶髪の男はこちらを
ゆっくりと振り向く。
髪は所々跳ねており 起きてすぐに家を飛び出したのだろう。
「よ、よう」
「よう じゃねえよ なーに遅刻した分際で呑気に買い物してんだよ!!」
あろまは小柄なためえおえおを見上げる形となる。
えおえおは申し訳なさそうに俯きながら
もそもそと弁解を始める。
「いや遅刻したからこそお菓子とか色々買っていこうと思って……」
カゴの中にはたくさんのお菓子やおにぎり。
明らかに4人では食べきれない量を買おうとしている。
「その必要は無いみたいだけど きっくんが朝飯作ってくれるって」
「あっそうなの?」
態度がころりと変わる 彼の先程までの罪の意識は
どこに消えたというのか。
それからは商品をぽんぽんと棚へと返していき
カゴにはプリンだけが残る。
「お前…」
「ちゃんと4人分買うから」
「ならよし」
あろまのただならぬ何かを感じ取ったのか
えおえおはすぐに解決策を見出す。
買い物を終え、えおえおはお前らの朝飯のため急ぐ とか言い残して荷物を奪って走っていった。
彼なりの償いのつもりなのかもしれない
そんな不器用なところが彼のいい所だろう。
「プリンだけ別の袋に入れてもらっててよかったな」
あろまが手元の袋を見つめてにこりと笑う。
もちろんこれは俺が理由で微笑んでいる訳では無い。
わかっている。 わかっているのだが。
それでも俺の心臓は意識してしまう。
胸の鼓動がうるさく響いて身体が熱くなる。
それを治めるかのようにいつもおどけて
返してしまうのが俺の悪い癖だ。
「ほんとほんと!えおえおは本当しょうがない奴だからな!ははははは!!!」
またやってしまった。
いつも誤魔化さないように何とか
努力するがこれに至ってはどうにも出来ない。
俺はあろまにいつ愛想をつかされても
おかしくない奴だ。 呆れられてもしょうがない。
「はは、本当そうだな」
それでも彼は俺のことを否定することなく
柔らかく笑むのだ。
俺はただ彼の優しさに甘えているだけなんだろう。
でもその甘い心に俺はまだ溺れていたいんだ。
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