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「律儀だねぇ…まあそいうの嫌いじゃないな」
俺はそう楽しそうにいう秋一さんを優しく見ながら、瓶のラベルに描かれた美しい水墨画の山々の一部に彼の名前を書いてから、ずっと渡せれていなかったこのバーのメニュー表を手渡した。
「おおっ…ありがとう、そういえば貰っていなかったねぇ」
「はいそうですね…その何というか浮かれてしまって、出すの遅くなって申し訳ないです」
「おいおい、そう謝らないでよね!せっかくのお酒がまずくなるんだけど!!」
秋一さんはそう茶化すように言いながらも、別に怒ってなんかないぞという態度を示してくれるので。
俺は「わかりました、ありがとうございます」と一度だけ言ってから、そんな出来事があった事すら分からない態度で、この店に久しぶりに訪れた来客をもてなすために…。
琥珀色に輝くウィスキーべースのカクテルを作り上げて。
純米大吟醸蜻蛉島をゆっくり楽しむ秋一さんに、俺はそのカクテルを。
「お口に合わなかったら、捨ててくださいね」と言いながら手渡して…。
ここに居ない隆虎さんの事を、少しだけ懐かしむかのように思った。
─何故なら、今出したカクテルは彼がこの店に出すべきと、オススメしてくれたものだったから…。
俺はそう思う事を、どうしても止めれなかった…。
「…ロブ・ロイか、いい趣味だね。ちょっとびっくりしたよ!」
「よ、良かった…実はこのカクテル常連のお客様がこの店で出すべきだと仰られてたカクテルでして」
「へぇーそうなんだ、キャロルじゃなくて…ロブ・ロイ推すなんて、その人とっても素敵だね」
秋一さんはそう言いながら、持っていた白の盃をカウンターに静かに置いてニヤリと笑う。
「はい、とっても素敵な方です!! 焦げ茶の髪がとってもかっこいい、まるで騎士のような紳士の方なんですよ…って俺何言ってるんだって感じですね。すみません」
「別に謝らなくてもいいよ…でもその焦げ茶髪の騎士っぽい紳士…もしかしたら知り合いな気がするかも」
「ええぇぇっー!!本当ですか…?」
まさかの発言を聞いて、俺はそう驚くように声を上げながら秋一さんに問いかけると。
「…君ってさ、ここの地区の生まれじゃないよね?まあ見た目からして第五地区の島国の子だから間違いないと思うけど。ここ第ニ地区は別名赤髪の地区とも言われてるから…赤色じゃない髪の人物はかなり少数なんだよね、だからすぐにわかるし…あとそいう違う髪色の人用のお店とかもあって、多分きっと俺はそいつのことをそこで知り合った気がするな」
「…そんな、お店があったんですね!!俺その…ここら辺しか知らなくて、そいうお店があるなんて知らなかったです」
「そう落ち込まないでよ。まあ、知らないのも当然だと思うよ…だってそこに行くには招待状がないと入れないし、というか持ってないと辿り着けないし…だけどさ、君はラッキーだよね…ちょうどその招待状一枚余ったから捨てようと思ってたんだけど…君にあげるよ。さっきの蜻蛉島のお礼にね」
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