アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
8
-
皇帝ペンギンが雛をコロニーに連れて帰るような素振りで、秋一さんはバーの奥へと消えていった…。
「えっ…あっ…!?ちょっと秋一様っ…最後のどいう事ですか!!」
「…なんだかあの親にしてあの子って感じですね」
「楓はまだそう思うのか…まあ今はあの人に対してそう思っていればいい今はね…。さてと何だか色々あったけど、俺と話がしたいんだろう?」
隆虎さんはそう言って、近くにあるバーカウンターに俺を連れて行くので。
俺は「はい、貴方とお話がしたいです…どうして、あんな事をしたのかも知りたいので」と、そうこの前のことについて問いかければ。
隆虎さんは少し苦しそうな顔を見せて、俺の手を静かにとってからその指先に、許しを請うような口付けを一度だけして…。
「楓、俺は人間じゃないんだ…そして俺の本名は隆虎でもない、まあこれに関しては薄々気づいていると思うけど…俺の口からちゃんと伝えるよ。俺はフラント・キャロル…君があのプラネタリウムで座った席の本来の持ち主さ」
「嘘っ…隆虎さんが、フラント君だったんですか!!」
「ああそうさ…俺が臆病者のフラントだった…でも、もう違う。何故ならフラントはあのプラネタリウムで、胸を銃で撃たれて死んでしまったから…」
そう隆虎さんは、いや違うフラントさんは心臓を強く抑えて、目に大粒の涙を浮かるので。
俺はそんな彼の涙を見て、同じぐらい胸が苦しくなり思わず彼の背中に腕を回すようにギュッと抱きしめると。
「…楓…ありがとう、だからこそ君にだけに教えたいんだ。俺が人間でいた最期の時に何を見たのかを…。君にだけにバラそう、そうそれは君も見たあのプラネタリウムの星空なんだ」
「えっ…そんなっ…嘘っ…ですよね」
「嘘なんかじゃない、これは本当の事さ…。だからあの時俺は君に酷い態度になった、だって君がフラントについて知りたがったから…あんな風な過激な態度になってしまったんだ、ほんとすまないと思ってる」
フラントさんはそう言いながら、俺の目をじっと見つめて何度も謝るので。
そんなに自分を責めないでください、俺も貴方にあんな事を言わなければよかったとそう心の中で思って…。
ひたすら彼の背中をさするように何度も撫でてから、俺の方から触れるだけの口づけを贈れば。
「本当に君は優しいね、こんな人でもないモノにキスなんて…ほんと君は良い子なんだね。でも人を支配し、この世界に偽りの支配をもたらす滅びの騎士である俺にはもうしたらダメだよ」と、
そうさっきとは全く違う態度でニヤリと笑いながらフラントさんは言うので。
「だったら、悪い子になります」とそう真面目に言い返せば。
「楓が悪い子?あはははっ…そうなってくれたら嬉しいけど、きっと今の君ではなれないさ」
「…やってみないと分からないですよ?」
「いやそう可愛く言われてもね…まあいいや、そんな事よりウィスキーでもどうかな?」
フラントさんは俺の言葉をそう言って終わらせて、俺の持っているシャンパングラスを奪いとりながら…。
バーカウンターにおいてある一つのボトルを器用に取り出して、グラスに一口分だけ注いで俺に手渡そうとするので。
俺は彼の背中から手をはなし、右手でそれを受け取って。
グラスから香る木の優しくて清々しい匂いをじっくりと楽しみながら、彼の目をじっと愛おしく見つめると…。
「俺の目をつまみにして飲むつもりなのかな?楓は」
「ええっ…いえっ…そんなんじゃないですっ…」
「おいおい、そんなに照れるなよ。ほんと可愛いな楓は」
フラントさんはそうニコニコと嬉しそうに笑いながら、ウィスキーの入ったショットグラスを左手に持って。
「…そんな君との再会に乾杯ってね」と今までにないぐらいの優しい声でそう囁くので。
俺も彼の言葉に続いて。
「素敵な貴方との再会に乾杯…」と彼にだけに聞こえる声で返した。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
20 / 26