アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
陸
-
俺はどうしてあんな事を言ったのだろう。
田町と話している柳が気になり
とうとう呼び出しまでかけてしまった。
「…はぁ〜……俺は何やってんだよ…。」
呼んでどうするんだと今更ながら後悔している。
もう放課後になる時間だ。
年甲斐もなく緊張しているのが分かる。
そんな事を思っていると、ドアがノックされた。
『柳です。失礼します。』
はっきりと聞こえる声は間違いなく柳のもの。
「入れ。」
そう言うと、柳が部屋に入ってきた。
やはり地味だ。
髪の毛長いし…てか、邪魔じゃないのか?
「…あの、何か御用ですか?」
ハッ、柳の容姿が気になりボーッとしていた。
話す内容なんて考えてなかったが慌てて口を開く。
「…いや、初日はどうだった?
久しぶりの学校で疲れたんじゃね?
田町と話し込んでたみたいだけど…
変なこと言われなかったか?」
俺がいい終わるなり、フフッと柳が笑った。
あ、笑った…。何が面白かったのかは分からんが。
「先生、意外です。朝の感じからすると
僕のこと面倒臭いと思っていると思ったのに
気にかけて下さってたんですね?」
また、フフッと柳は笑ったが
正直俺は笑うどころか、焦っていた。
バレてる。初対面でしかも
一回り近く歳の離れた子供に見抜かれていた。
俺がそんなことないけど、と小声になる。
またまたフフッと笑い、そうですか?と柳は言った。
無意識だったのだろう。
俺は目の前にいる柳の前髪にそっと手を伸ばした。
柳は、ん?と言ったがその手を振り払うことなく
素直に俺に顔を見せてくれた。
「傷だいぶ薄くはなったんですけど…
やっぱり気になりますか?」
前髪を分けた先にあったのは額から左目まである
生々しい縫い傷であった。
「ごめん…。」
そんな言葉しか出てこなかった。
思わず俯いてしまった。
無意識とはいえ、無神経だった。
その傷は堂々と出して歩けるような
小さな傷なんかじゃなかった。
「先生。」
そう少し張った声が聞こえ
弾かれたように顔をあげると
柳と初めて目があった。
フフッと笑い、気にしてませんよ?と柳が言った。
地味なんてとんでもなかった。
柳の笑顔は凄く綺麗だった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
10 / 21