アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
男前めでたい祭りでワッショイ【書いてみました】「船山昇のレシピ」のキャラがSABUROにご来店
SABURO
-
入ってみようかな…と、ドアノブに手を掛けた時、パタパタと足音を鳴らして女性客が駆けて来た。咄嗟にドアを開けて先を譲ると、朗らかな笑顔で振り向いて礼を言われた。
「わぁ、ありがとうございます!あれ?新しい人ですか?」
え?何?
女性は店内にいた男性に話を向ける。
「高村さ〜ん!すっごい上玉じゃないですか!!相変わらずクオリティ高いですねぇ、またファンが増えますよ?」
「西山、何言ってるの!お客様だよ、失礼だろう。」
スーツ姿の中年男性が、僕に頭を下げる。
「大変失礼しました、こいつ早とちりで。本日はお食事ですか?」
やりとりを聞きつけ、店内から厨房着の男性が現れ、小声で囁いた。僕と同世代の…二十代後半だろうか。
『おじさんどうしたの?なんかトラブル?』
『ん、西山がこちらの食事にみえた方をスタッフと勘違いして。』
『……ああ、なるほど…。』
厨房着の男性がこちらを向き直って、「いらっしゃいませ、失礼しました。さ、どうぞ店内へ。」と促した。店内は、1時を回ってもそれなりに満席。僕の誘導をギャルソンエプロンを巻いたホール担当に引き継ぎ、厨房へ戻っていった。
「おひとりでよろしいですか?カウンター席もありますが、お急ぎでなければ少しお待ちいただければテーブルへご案内できますが?」
「一人旅なので、時間は沢山あります。できれば、厨房が見える席をお願いしたいのですが…」
ストーブのあるウェイティングスペースに通された。厨房の様子が見たいなんて言うと、同業者と思われるのか…。ホール担当が厨房に向かい、厨房の背の高い方がチラリとこちらを見遣る。いや、この僕の風体ではとても料理人には思われないだろう。目が違う。眼力が。
その点、この店の厨房の二人は、如何にも美味しいものを作りそうな良い目をしている。料理の目配りは人付き合いにも繋がる。この二人、モテるに違いない。カウンター席に陣取っているのはお客というよりファンなのだろう。おっと、ついジッと見つめてしまった。この奥目のせいか、見ているだけでも睨んでいるように思われたことがあるので、敢えて目を合わせて会釈した。
「あの、伺ってもいいですか?」
先程の朗らかな女性がウェイティングの長椅子に座り、話しかけてきた。
「ご旅行?出張ですか?東京の方?お仕事は?もしかしてお店持っていらっしゃる?」
矢継ぎ早に繰り出された質問に、戸惑いながらも、正直に答える。
「休暇を使ったひとり旅です。東京の電機メーカーに勤務しています。店舗運営、特にレストランのオーダー端末の開発を専門にしていたので、実際のレストランの内部の様子に興味がありまして。今は配属が変わってしまいましたが…。」
サラリーマンの悲しい性で持ち歩いていた名刺を取り出す。
「今は広報…なんですね。仙道さん。もっと緩い会社の方だったら、私のブログに掲載したかったなぁ。」
西山さんから戴いた名刺には、自身のブログのタイトルとURLも記載されていた。
西山さんを経由してこちらの身の上が伝わったらしく、厨房もホールも、ドリンクサーバーも見渡せる席に案内された。見ていて構わない、の意思表示が嬉しい。
オーダーも完全手書き。…メニュー名の他に、細かな好みや嫌いな物など指示が書き加えられて入るものもある。これは電子化するのは難しい。テーブルの上の手書きのおすすめペーパーもそうだ。全てをデジタル化したい訳では無い。むしろこういうお店にこそ、そのままのやり方で都会でも生き残って欲しい。
折角の北海道旅行だから、食べるならこの土地ならではのものを…と、エゾシカのラグーパスタを注文した。朝食で一年分のプリン体を摂取したので、昼は軽く済ませるつもりでいたけれど、温かな湯気と香りを目の前にしたら『食べたい』欲求が目を覚ました。一口目を口に運ぶ。「うっわ…え?」思わず声が出てしまう。暖かくて優しい味。次々と手が伸び、普通に完食していた。
空席が目立ち始めた店内。店員さんに片手を挙げ、食後のコーヒーをお願いした。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
2 / 5