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真弓兄ちゃん 8
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翌日 遅く起きた 俺は 爺ちゃんが帰ってきて一応 顔だけ出して 大学でやらなければならないことが 出来たと 嘘をついて 自分の独り暮らしの 部屋に帰って来てしまった。
明日は大晦日。
本当は やることなんか ありゃしない。
大掃除と言ってもここ新築マンションに住んでまだ数ヵ月。普段の掃除で 充分足りている。自炊はしてるが キッチンだって一人分のものなんて 作っても冷凍して 温め直して弁当に入れるだけ。
テレビを見たって年末特番だの 初詣だの。見ていても 独り者には つまらない。
ついつい 昔々の あの田舎で 過ごしたおぼろげな 記憶を辿っていく。
横浜は夏が暑いから 避暑と空気の良いあの田舎の親戚に行ったんだ。
横浜に居ても 家の中から外を眺めて 大人しくして。
未熟児で生まれて おまけに早生まれで 幼稚園でもひとまわり 小さかった。
ろくろくまともに 通えなかった。
しょっちゅう熱を出して。気管も弱くて 小学校入る前に長期入院をして 就学1年遅らせて。
小学校に入ってから イジメられないようにって 水泳と空手を習って。水泳はやめちゃったけど 空手をやりはじめてから 風邪も引かなくなって。
空手が面白くて 夏休みも正月も 練習に明け暮れて。
医者とも縁が切れた。インフルの予防注射で掛かり付けの医院に行ったら 爺さんになった医者に びっくりされたんだよな。
記憶の底に閉じ込めた 真弓兄ちゃんのことは 良き思い出にしておけば良かった。会わなきゃ 再燃することも無かったのに。あんなに イケメンだったなんて。いまだに 誰にでも 優しい人だったなんて。
俺 真弓兄ちゃん以上の人なんて 思い付かない。女?女は嫌いだ。
俺の周りの男も みんな アホとガキと。
そんな風に グダグダしていたら スマホが鳴った。
『もしもし?千春か?姉さんに 聞いて電話してるんだ。
ろくろく話もしないで 千春は帰っちゃったからなぁ。明日か明後日はこっちに 帰ってくるだろう?
正月だっていうのに おじさん いや 爺ちゃんとお母さんだけで。寂しがっているぞ。』
「いや こっちで やらなきゃいけないことがあってさ。課題を忘れていたんだ。」
『今日やるのか?それなら今日中に終わらせて帰っておいで。明日までなら 夜中も電車動いているから元旦に間に合うだろう?少し長くかかるなら 正月くらい休んで 一旦こっちに帰っておいで。』
本当はやることなんかありゃしない。具体的に追求してくる真弓兄ちゃんに 何も言い返せない。
「真弓兄ちゃんは?
正月は荷物まとめに 帰るのかい?」
『僕は 荷物まとめに一旦帰って今は横浜じゃないんだ。正月にはおいでって言われているけどね。正月は行くかどうかわからない。荷作りするのも結構大変なんだ。手伝いを頼もうかと思っているんだけど。向こうの都合が分からなくてさ。』
「ふーん。それなら そうだな 爺ちゃんや母さんの為に 課題を年明けにして 帰ろうかな。どうしようかな」
『よし。課題は 年明けでも良いんだな?
千春は〇〇県だったなぁ?△△市だったっけ?
ふふふ。千春。これから車で迎えに行くよ。荷造り手伝ってくれよ。』
「えっ えーーーっ!な 何? えっ えーー?」
『僕が今 住んでる処 お母さんから 聞いてないの?県は違うけど 隣接する××県だよ。』
「ちょっ ちょっと 待ってよ。何それ?」
『あと そうだな 15分ってとこかな?国道〇〇号の〇〇の信号を今通りすぎた。国道沿い?これからどういくんだ?』
完敗ですよ。
考える暇も 上手い言い訳も思い浮かばないまま 道順の説明をして 10分もすると
マンション前だぞ。
と 言われ 部屋の前まで来た真弓兄ちゃんに 拉致されるように 鍵を閉めて マンション前に停めた 真弓兄ちゃんの車に乗って 真弓兄ちゃんの住んでいる マンションに連れていかれたのだった。
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