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パーツ 9
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千春が新営業所に異動して5日目。
営業所の修理工場は それ用の駐車場に入りきらないほど 車検 修理依頼 そして折しも みなとみらい地区でのイベントと重なり 飛び入り客で てんてこまいだった。
高速のインターにも近いので 高速でトラブルがあると JAF をはじめとして この営業所に 持ち込まれることが多い。
又通りがかりの一般ドライバーも調子が悪いから見てくれないかと ふらりと来る。
祭日休日は横浜ナンバーの車より 地方ナンバーの車が多いくらいだ。
それが 本日は イベントと重なり 道路は渋滞しているし、目の前の歩道にも人は溢れているし 折しも 近くの首都高も 新路線が開通したばかりで 週末のいつもの忙しさに拍車をかけていた。
他にも 道に迷った とか 有名な〇〇はどういけば良いのか とか トイレを借りたい タイヤの空気圧 とか フロントは来客がひっきりなしだった。
千春はメカニックの依頼で部品倉庫に 朝から入りっぱなしだった。そんな千春に事務の女の子からは 〇〇から電話でーす。△△から在庫確認でーす。と呼び出しを受けて 倉庫の内線電話で応対していて 事務所に行けずじまいのまま 昼になってしまった。
一区切りついて 事務所に戻ろうとすると 部品部の山手真弓部長が ツナギを着て 部品商の来客を引き受けてくれていて 先程から部品倉庫の1階を出たり入ったりしていた。本来なら それも千春の仕事だ。
パソコンで在庫入力して 一段落すると 丁度 部長も一段落したようで ホッとした顔をしていた。
「部長 すいません。部品商の急ぎの方 任せっきりで申し訳ありませんでした。」
「うん。良いよ。そっちはどう?依頼分は在庫有った?タイヤのバランスだのエンコした奴だの ひっきりなしでご苦労さん。」
「はい。まぁ今日はイベントで 県外のお客様多かったですね。」
「うん。久し振りに 忙しくて カラダ動かしたよ。倉庫は階段があるから 山科君は大変だったね。」
「いえ。」
「あとは あれだな。」
と 部長が顎で示した先。
倉庫入口に置いてある大小様々な段ボール。前日オーダーした部品が 朝メーカーから届いたのだ。本来なら 朝一番で各々倉庫に収納しなければならない。段ボールの品物はとにかく 問題はオイルの入ったドラム缶。
千春はまずドラム缶から片付けようとした。いつまでも部品倉庫の入口には置いておけない。早急に他の部品も含めて それぞれの場所に置かなければならない。
特にドラム缶は動かすにはコツが要る。
すると真弓部長が ひょいと傾けて 転がして移動し始めた。
千春も同じように 傾けて 器用に転がし始めた。
2人して所定の位置まで転がして並べると真弓がニヤリと笑って 千春もニヤリと笑った。
知らない人間が真似してもこのように転がらないし 移動も出来ない。
「やるねぇ。山科君。」
「部長?デキますねぇ。」
そして 小さめの積み重なった段ボールを2人で抱えて 階段を掛け上がり 開梱しては 各々同種の部品場所に収納していく。
山手真弓部長は かねてから この営業所で やっていたので 収納は早い。
だが 山科千春も 旧営業所で 培った経験から 収納しながら 在庫確認も怠らない。
真弓は 傍らで手順よくこなしていく 千春に舌を巻いていた。普段おっとりとして 何を考えているのか 何をしているのか掴めなかった男が 実は 生真面目で 要領よく 部品在庫管理能力に長けている。しかも より長くこの部品倉庫に携わっていた真弓と 勝るとも劣らない 能力でこの部品倉庫を 把握して 同じ早さと的確さで 収納して。
あうんの呼吸で 仕事の相性が 心地よい。
部品の梱包してある箱も 真弓が納める場所に近い箱は黙って真弓に託し 千春の納める場所に近い箱を黙って真弓から受け取る。
普段なら 要領の悪い人間なら1時間位 要する部品収納作業が 2人とはいえ 僅か十数分で終わった。
しかもドラム缶は ひどいときは フォークリフトで運ぶ営業所もある。
気の合う人間と行う仕事は サクサク進んで 愉快だ。
全てを終えて 倉庫の 2階で 段差の上に2人で腰かけて 顔を見合わせて笑い合った。
ふわりと微かな汗の匂いに 2人して ドギマギして 2人して 慌てて同時に 立ち上がった。
夢から覚めたような真弓と
赤面する千春。
まだ お互いに 自分の心に
目を 背けて
不器用な 2人。
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