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疵(きず) 3
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行ってきます。
誰も居ない家だが 一応 声に出す。
途中 駅のロッカーに家の鍵と2個持っているスマホと財布をひとつづつ入れる。
そして持ち歩くのは 何の特徴もない 安物の財布。中には2、3枚の札と小銭だけ。免許証もカードもレシートも入れない。
スマホもそれ専用のサイトに使う物。偽名のプロフィールが書かれている。
トイレに寄って 鏡を見て 気合を入れる。
これから 会うのは 自称公務員。
平日の昼間時間が取れる ということとジムにも通っている。年末年始は休みではない。料理も作る。
等々 事前に聞き出した。
俺が住んでいる地域から電車で1時間。もう少し先なら 県外になろうという 駅で待ち合わせた。
俺の住むところから 離れていればいるほど 身元は バレない。
話の様子から消防署にでも勤務しているのかと 予想する。
身体はきっとマッチョかもしれない。
力では負けてしまうかもしれない。だから 駅で待ち合わせて 個室居酒屋に行くことにした。車に乗せられてホテルに連れ込まれたら 勝てないかもしれないから。
待ち合わせの場所を通り過ぎて 少し離れた場所を探す。
うまい具合に 通りを挟んで バスターミナルが有って幾つかベンチもある。
持っていた文庫本を開いてベンチに座った。何気に駅舎の大きな柱を見るとまだ相手は来ない。
すっぽかしかな?
それならそれで 構わない。
暫くしたら帰るだけだ。
待ち合わせの時間はあと3分。
すると キョロキョロしながら 男が柱の周りを見て 少し通り過ぎて又 戻ってはスマホを取り出して 時間を確認している。
髪は短め 肩から盛り上がっていて胸板も厚い。身長は予想より低いかな?顔はまぁまぁ。清潔そうに見える。
アリだな。
よし。酒くらいは付き合おうか。
経験豊富そうなら すっぽかすつもりだったが ソワソワして落ち着きが無い。ゲイだけど 職場では隠している風だ。男と付き合ったことが無いと みた。
案外手玉に取れるかな?こっちのペースで 進めることができそうだ。もし 良い感じになったら キスくらいはさせてやろう。こっちからねだって 翻弄させるのもアリ。
ベンチから立ち上がって 遠回りして
男の背後に回る。
オドオドした雰囲気を出して恥ずかしげに 下から 見上げて 気付いているけど 知らない振りをして奴の 気持ちを和らげてやろう。途端に鼻息荒くして強引な奴ならお断りモードで 飯だけ奢ってもらって 逃げるか。手くらい握らせてやろうか。
「あのー しのぶクンかな?」
そう 俺のハンドルネームは 色々。今回はしのぶ。
「あ あっ はい。」
「俺は 〇〇。わかる?」
「はい。」
「いやぁ 可愛いなぁ。ビックリしちゃったよ。本当に20才?」
そう言われたら はにかんでみせる。下を向いて 口をモゴモゴさせてみせる。
相手の男がだらしなく顔を弛める。
バーカ。と心の中で 罵る。
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