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疵(きず) 8
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夜 ベッドに寝転んで いつもの 人にアクセスする。
(こんばんは)
しばらくして返信が来た。
(こんばんは。今夜は遅いんだね。)
(今夜は 新しい男と会った。)
(それで?どんな男?君のことだから 充分 それとなく探ったんだろう?)
(うん。多分リーマン。既婚。単身赴任で都内在住。上司の娘と結婚したらしいけど 元々バイだったみたい。精神的に疲れているっぽくて。横浜のハッテン場にもネットで調べて行ったり 映画館にもバーにも出入りしたみたい。セフレは出来たらしいけど あまり気に入らなくて別れたばっかりみたい。病気が怖いから キスもしなかったらしいよ)
(その男 飢えてた?それとも 不特定多数とは ノーサンキューって感じ?)
(リーマンだから ハメ外さないって感じ?だから 俺初めてって 男の子ぶったんだ)
(じゃあ ホテルまで行ったんだ?)
(うん。行った。予想通りに紳士ぶる奴。)
(じゃあ いつもみたいに 部屋を暗くして。少しは触らせたの?)
(少しだけね。相手だけ脱がせて。弄って。迫ろうとすると笑ってかわして。耳が感じるみたいでさ。耳に息吹きかけながら扱いてやって。)
(君は又しても 服を着たまんま?)
(いや 上は ノースリーブのアンダーまで脱いだ。散々さすさすされちゃったよ)
(しかし 本当に 毎回毎回 よく 犯されたりしないよね。相手だけイカせて。君はシャワーすら浴びないんだろう?つうか 服を脱ぎもしないで。)
(相手をよく下調べしてるもん。危ない感じとは 会わない。)
(欲求不満だろう?誰でも良いからセックスしようとは思わない?)
(だから セックスの狩人みたいな経験豊富な奴とは会わないもん。流されそうで怖いから。)
(だから君は面白い。ウブな男と会ってばかりで 物足りない思いを抱えて。)
(素股ならあるよ。)
(でも挿入はさせなかった。前戯もしなかった。服は上も脱がない。下も下着をずらしただけ。)
(あれっ?その話したっけ?あなたは不思議な人だよね。俺 あなたには 何でも ぶっちゃっけた話が出来る。)
(かれこれ2年にもなる話し相手だからね。)
(そうか。もう2年にもなるんだね。
あなたは男?女?俺に携帯番号もアドレスも教えてくれてさ。俺が悪い人間だったらどうするの?)
(うふふ。どうしようか?でもこの2年何も不都合なことはなかったからね。)
(改めて考えると あなたには 本当に何でも話してきたなぁ。)
(本当にそうなら 嬉しいけどね。君には 自分でも呑み込んで我慢や苦しい気持ちがあるような気がするけど。まぁ人間は色々押し込めて生きて行かなければいけないこともあるからね。)
(ありがとう。なにか 今度はあなたの生の声が聞きたいかも。もし もし 直接電話したら………怒る?)
(いや 構わないよ。電話に出られない状況なら出ないし。)
(わかった。今夜も聞いてくれてありがとう。おやすみなさい)
(おやすみ)
そしてうっぷんが少し軽減した俺は スマホを閉じた。
そして2年もの間 俺の赤裸々な話を 聞いてくれた 何処かの誰かに おやすみなさいと つぶやいた。
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