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疵(きず) 19
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夜毎 俺は快楽の夢に 悩まされた。
毎朝 自分の下着の中を 覗いてうんざりしてしまう。
誰にも言えない。良い歳をして 毎朝下着を洗濯しなければならないなんて。毎朝シャワーを惨めな気持ちで浴びなければならないなんて。
髭だらけの熊みたいな男に囚われている。
あの優しさに囚われている。
巧みなキスに囚われている。
服の中に入り込んだ 手を指を
忘れなければならない。
新たに見ず知らずの男を探そうか?
忘れさせてくれる男は 居る?
いや 今まで 満たしてくれる人は居なかった。
いや 満たされることが怖くて 避けていたんだ。
毎日 やるせない 行き場のない モヤモヤが募るばかり。
そして 俺は 夜 意を決して
アノ人のスマホに直接電話をした。
俺の瑕疵を
話してみようと思った。
画面に 文字として
残るのは
耐えられなくて。
記録として 残るのが どうしても
羞恥心に苛まれる。
口頭なら
口頭なら
……………
「はい。
千春君?千春君だね。
やっと 電話をかけてくれたんだね。
嬉しいよ。」
「あっ 電話しても宜しかったでしょうか?すいません。」
思いもよらず落ち着いた 静かな声に
何故か 救われるような
気がして
今まで コノ人に
鬱憤を晴らすことが どんなに心の平穏をもたらせていたか 知らされたような気がして。
不覚にも 泣いてしまいそうで。
これから 話すことが
自分の 一番醜い 変えることの出来ない 醜悪な身体のことを暴露することの 怯えが。
言葉に詰まって
何も言えなくなって。
すると アノ人が
「おい どうした?どうしたんだ?
千春君。君は何処に住んでいるんだ?
たぶん 東急線だと 思っているんだが。」
「……そ そうです。」
「僕は今 東急線沿線の〇〇駅近くに居るんだが。もしかして 近いんじゃないか?」
「えっ?………」
黙っていることが 肯定だと とったらしく
「なんかあったのかな?
僕は今夜仕事も終わって 予定が何もない。
夕飯を食べ損ねて 非常に空腹なんだ。
良かったら 話を聞くし。話したいことがあるなら。っていうか 独り飯は 味気ないから 飯を付き合ってくれたらとても嬉しいな。
静かな処で邪魔されずに飯を食べないか?
君は夕飯食べた?」
「夕方軽く食べました。」
「じゃあ決まり。食べよう。
駅西口の△△商店街分かる?
そこのコンビニ曲がった▽▽って居酒屋分かる?個室居酒屋。もう客も途絶えただろうから。
実はさっき駅を出て そこに向かっている。」
電話の向こうから
いらっしゃいませー という声が聞こえた。
遠くから
空いてる?あとからもう一人来るから
はいかしこまりましたー。
「聞こえた?じゃ 待ってるよ。ご飯食べよう。」
そういって スマホが切れた。
確かに
その居酒屋まで 歩いて5分程だ。
様々な男と会った話で 俺の住む処が 分かったのかもしれない。
どちらにせよ もう 直接スマホで連絡を取ってしまった。
とにかく
俺は 癒されたかった。
ゲイサイトで待ち合わせとは違うんだ。
古くからの友人に会う 気分で 普段着に近い服装でその居酒屋に向かった。
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