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兄
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「らしくない」
両手で包み込まれた頬がほのかに暖かい。
俺らしさ、とはなんだっただろうか。
「優さんのこと、大事にしたいんだろ」
「…うん」
「優さんのこと、分かってあげたいんだろ?」
「~っ、うん」
スっと手を離され、強く目を合わさる
「なら、うじうじしてたって仕方がないって分かってんだろ?」
容赦の無い、的確な言葉だった。
だけどそれは、確かに俺のことを思って発せられた、誰よりも優しい言葉で
「自分の気持ちを押し殺して、相手の気持ちを優先するなんて、相手にとっても失礼なことだ。そんなことされたって1つも嬉しくなんかない。優さんだって真咲が大切なんだよ。たった1人の弟だぞ?そんな存在にずっと悲しそうにされてみろよ」
下がりかけていた目線を、パッと達也に向けた
そうだ、最近の俺は優くんと登校出来ない辛さから、夕食中に優くんがどれだけ明るく話しかけてくれても曖昧な相槌しか打てなかった。そしてそれを優くんがとても心配しているのを、見て見ぬふりをしてしまっていた。
『まーくん、おかえり!』
『…ただいま』
『っ大丈夫?どこか具合でもーー』
『大丈夫だから!ちょっと食欲が無いだけだよ。
…今日はご飯いいや』
『……そっ、か。余計なことしてごめんね…』
俺のために作られた、暖かいご飯
食べる人がいなくなってしまったそれは、酷く冷たくなって、捨てられてしまう。
それを、俺は優くんにさせてしまっていた。優くんの気持ちを考えると、押しつぶされてしまいそうな程苦しい。
俺は、自分のことしか考えられていなかった。
誰よりも、大切にしたい存在だったのに。
誰よりも、守りたい存在だったのに。
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