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兄
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ただ、走って、走って。
見慣れたはずの道も、ひどく懐かしく感じた。
普段使うことのない筋肉が悲鳴をあげている。
そんなことはどうだっていい。
「っ、ついたっ!」
久しぶりに見る優くんの大学。
整わない息を必死におさえ、滴る汗を荒々しく拭うと、グイッとネクタイを緩めた。
膝についた手を離し、大きく息を吸い、その大きな建物に足を踏み入れる。
思い返してみると、中に入るのは初めてだった。
お昼時ということもあり、多くの学生で溢れかえっている。その多さに思わず怯んだ。
人混みの中から優くんを探すために、今出来る精一杯の背伸びを繰り返した。
忙しなくキョロキョロと辺りを見渡しながら、歩き回っている姿は思いのほか目立ってしまっていたようで
「あの子葛城高の制服じゃない?」
「ほんとだ、でもなんで?普通に平日だよ今日」
そんな声が聞こえて、我に返った。
学生二人組がコチラを指さしながら話している。
1度意識してしまうと、今までに優くんを探すことに必死で気づかなかった視線がチクチクと刺さる。
この大きな大学でどうやって優くんを探すか、全く考えずに来てしまったことに今更ながらに気づいた。
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