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六人目
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「アオバは、病気だったんです」
ダイキは下を向いて語り始めた。
「あ!アオバっていうのは友達の名前なんですけど、僕はアオバの病気の事を知らなくて……
というか、僕達全員に、アオバは自分の病気の事を隠していたんです」
アオバさんの事を話すダイキはとても苦しそうだった。
「アオバは、僕にとって最初の友達だったんです。高校に入った時の」
「……とても、大事だったんですね」
「どうでしょう。僕が、そんな事を言っていいとは思えないんです」
話、続けますね。ダイキは笑った。
「クラスも違うし、あんまり会えなかったんですけど……時々話してはいたんです。あの人は、とても優しかったから。
どこか大人のように達観した考えを持ってて、サバサバしてて。僕はそんな彼が好きでした。
でも、彼は死んでしまったんです。寒い時に、僕の好きだった季節に」
それは修学旅行に行って、テストが嫌だと騒いでいた頃だったという。
「僕達は、集会で皆集められて……その時、初めて知ったんです。アオバが死んでしまったんだって」
「……貴方は、辛くなかったですか?」
ダイキはどこか遠くを見た。
「分かりません。辛かった、とかそういうのより……何も考える事が出来なかったので」
そっと、イルが記憶を見た。
すすり泣く声。建物の中に響く、泣き声の混じったオッサン……多分、教師の声。
その中で涙も流さなかった、ダイキ。
「僕は泣く事が出来なかったんです。そんな僕に、アオバが親友だ、とかとても大事だったとか、言っていいのか分かりません。葬儀にも行きませんでした」
ダイキが、ロゼッタの目を見た。
「でも、多分……僕だけが知っている事があるんです。それを、相談しに来たんです」
「貴方だけが、知っている事ですか?」
「はい」
ダイキの目は、真剣さを帯びていた。
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