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──その施設にしかない、この世界に今まであったとされている音楽や、書籍などを。どんなキーワードでも、探し出せるデーターベースに。
『鏡の男がみた夢は愛の夢、眠り姫を起こすのは、気高き……』と打ち込めば。
検索中と……数分でたあとに、白いページと『該当する結果はありません』という。
ある意味『死刑宣告』のような検索結果に、心がさらに不安で一杯一杯になって……。
ふと脳裏で『どうして、アレクセイはこの歌を知っている……』と、そう言ってくれたのか、
そして、エリックとセシュの方が正しくて……。
──誰よりも俺の事を愛してくれるあの人が、間違っているのだろうか……。
嗚呼一体、どっちが真実なんだろう。
それを彼に聞きたくて、どうしても聞きたくて……仕方がないけど。
『君が僕に逢いたいって連絡を、夜まで我慢できたら……』というお願いを、俺は何があっても、破りたくなくて……。
──不安で、今にでも押し潰されそうになりながらも、彼と約束した時間まで……。
今の俺に与えられた責務を、果たす為に。
問題を抱えた依頼主を、問題を抱えている俺が、今日も調査し助けるのだ。
◆◆◆
「今日の依頼もなんとか、無事に上手く終わって良かった」
俺はそうほっと一息つくかのように呟きながら、誰も通らない道の壁にもたれ掛かって。缶に入った甘いミルクティーを、ごくりと飲み干してから……。
ブラウンのジャケットのポケットに入れていた、ゆるキャラのような緑色のメンダコの絵が、大きく印刷された携帯端末を、取り出して。
──あの人からのトークや、メールなどがないのかを、急いで確認して見ると……。
こっちが悲しくなるぐらい、何一つもなくて……。
俺は言葉に出来ない程の『どうしようもない、不安』に、押しつぶされながら。
手足を、ガタガタと震わせ……。
目から流したくもない涙を、ぷつりぷつりと溢し。
『これが、自分の心の弱さ』なんだと……。
そう理解して、強くあろうとしても。
──目から流れる涙は、より一層強くなるばかりだったので……。
俺は戒めとして、深く自分を責めようと考えた瞬間。
『そっちは、無事に終わった? 僕は今ちょうど、終わった所だけど。まだ、終わりそうにないのなら、そっちへすぐに、飛んでいくよ?』という、彼からのトークメッセージが来たので。
俺は溢れる涙を左手で拭いながら、その返答に。
──砂漠の中で見つけたオアシスに、水を求めて、走り出す人のような気持ちで……。
『仕事は、もう終わったから……。今は、アレクセイのマンションに向かってる最中、多分、5分後には着くから……。部屋で先に待ってる。だから……早く、アンタも来いよ!! じゃないと、このまま俺、帰るからな』と。
彼に自分自身が今とてつもなく、淋しくて壊れそうになるぐらいの気持ちだと、悟らせないように……。
あえて、ツンケンとした態度で。
──こんなか弱くてカッコ悪い、恥ずべき自分自身を。
何があっても、彼だけには知られないように……。
自分の本心とは真逆の事をあえて書いて、彼にそう送りつければ。
『……分かった。でも、残念だけど僕のが先だよ。だから、今日は朝になっても、ずっと、一緒さ……。逢えなかった時間なんか忘れるぐらい、ぎゅっと、抱きしめてあげるよヴィクトル』と、不安で壊れそうになっている俺の事を、見透かしたかのように……。
──今の俺が、最も欲しい言葉を、的確にくれるので。
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