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金のような銀の髪を、腰まで綺麗に伸ばした貴族と、黒髪を後ろで一つに縛った、着物のような衣装を身に纏った貴族と思われる人物が、枯れた桜の木の前で……。
『鏡の男がみた夢は愛の夢、眠り姫を起こすのは、気高き死をもたらす騎士……嗚呼、なんて幸福な物語。でもそれは、人にとっては不幸な物語。悲しい悲しい二人、呪われた愛の悪夢。幸福と不幸の上で、私は貴方を忘れても、私は貴方の元へと向かうでしょう。たとえこの右手を失っても、私は貴方の手をとって、果たせなかった想いを叶えましょう』と、
──あの夢と同じメロディーで、歌う映像があったので……。
俺は心の底から『良かった……嘘じゃなかった。本当に本当に、良かった』と強く思って、ぶつりと糸が切れるように、目から涙をぽろぽろと溢せば。
「泣くな!! 泣かないで……くれないか? 僕、僕は……君を悲しませる事を、また性懲りも無く、してしまったね。ごめんよ、こんな映像なんか、見たくなかったよねぇ……。わかってる、僕と君以外の奴らが、この歌を歌ってるなんて!! 知りたくなかったよね」
「違う、そうじゃない!! そんな風に、俺は思ってない。むしろ、泣いているのは……。嬉しくて、俺、嬉しくて泣いてるんだよ!!」
「……嬉しくて泣いてる? 嗚呼……もう、僕って本当に駄目だな。君の事になると、理性なんか、すぐにどこかに行っちゃうから……。早とちりしすぎだね」
アレクセイは急に泣き出す俺に、相当焦ったらしく。
スマフォを勢いよく、ソファーの上に放り投げてから、そう答えるので……。
俺は在らぬ誤解を招いてしまった事に対して、詫びるように、彼にしか聞こえない声で。
「俺の方が、ごめん……。勘違いさせるつもりは、なかったんだよ」と言えば。
「そんなの知ってるよ。でも、やっぱり君の涙は、心臓に悪いな……。ほんと見ちゃうとね、早くこの世界にいる『恩知らずども』を全員排除しないとなって、強く思っちゃうからさ」
「……お前、その過激派思考、ほんとやめろよな。俺の事が好きなのは分かるけど、それだけは……。駄目だと思うぞ」と、俺は相手を心配するようなニュアンスで言いながら、嬉しくて流れる涙を、左手で優しく拭ってから……。
こう続けて、彼に答える。
「……ってそんな話しは、ここまでにして。さっきの映像ってマジなんだろう? マジなんだよな!! じゃあ……その……もしかして、俺って、第五地区の貴族って事になるよな? そうだよな?」
「うん、そうだよ。あの歌を歌えるのはね、第一地区の貴族と第五地区の貴族だけだから。歌えた君は、そうなるね」
「だよな!! そうだよな……よっしゃー!! 俺の記憶の手がかりが、アレクセイのお陰で初めて見つかったよ。ありがとう、俺……貴族だったんだ。そうだったんだ……」
アレクセイの返答に俺は、にっこりと歓喜で満ち溢れた笑顔を見せて。
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