アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
血を吸うなら
-
ふと目を開ければ。
重たくて暗い空が広がる、それは無彩色と言ってもいいぐらいの灰色で。
──とうとうこの世界は、終焉にでも向かったのだろうかと?
そう思って、あまりの嬉しさににこりとあざけた笑みを浮かべようとしたら……。
何故か、上手く笑うことが出来なくて。
一体どういう事だろうかと、脳裏で考えながら自身の体を起き上がらせようとしたら……。
ピクリとも起き上がらなくて、ここで自分が今かなりやばい状況になっている事に気がついて。
さっきの笑みとは違う、自分を蔑むような乾いた笑いを吐き出しながら。
「……最低、最悪な朝だ。この僕がまさか、こんな風にぶっ倒れるなんて……初めてじゃない? いや違うな……私としてなら二回目か……」と呟いてから、今できる精一杯の力を振り絞って辺りを見渡すと。
どうやらここは、僕の別宅のマンションではなくて。
──僕の最推しで、最愛のヴィクトルの事務所兼自宅の寝室のようだったので。
尚更、何でここでぶっ倒れて居るのだろうかと? 自分の事なのに意味不明すぎて、訳がわからんと言い放ちそうになったが。
よくよく、落ち着いて……昨日の事を思い返せば。
昨夜は、僕がこの世界で誰よりも大切にしている『アキツシマ』の事を有る事無い事で、悪く言い続ける奴らにブチギレて。
死の騎士として、加減なくひたすら暴れて。
夜が明けるまでひたすら、それらを痛ぶっては治してという。
──生かす能力と殺す能力を生まれた時から、持っている自分だからできるやり方で遊んでた覚えがあったので……。
「嗚呼、成る程……。それなら仕方がないな。僕のアキツシマを悪く言った奴が全部悪い、だから……こんな状況になったのもそいつらの所為だ。今度見つけたら……お返ししないとな」と自分の所為なのに、この原因を作った側に怒りを押し付けるように言い放ったと同時に。
かちゃりとではなく、バーンと勢いよく部屋の扉が開く音が耳に響くので。
チッ……と煩さに舌打ちをしながらも、扉の方に視線だけ向けると。
なんとそこには、血相を変えた表情を見せる。
この部屋の本来の持ち主である、ヴィクトルが居て。
今にでも泣き出しそうな瞳で、こちらを凝視していたので。
僕はそんな彼に心配かけさせないように……。
「そんな顔してどうしたの? 僕なら大丈夫だから……気にしないでヴィクトル?」
「……大丈夫なんて、嘘つくなよバカ!! どこが……大丈夫だよ? メンダコさんたちが、アンタをここまで運んでくれたんだぞ!! それなのに……何でそんな事言うんだよ!!」
「メンダコ達が運んでくれてたの……嗚呼、クソ……僕ってほんと愚かだ。 ごめんねヴィクトル、心配させたね」
「ごめんじゃねぇよ……なに謝ってんだよ? そんな事より体大丈夫かよ? 俺で出来ることある? 俺アンタの為ならどんな事でもするよ……」
ヴィクトルはそう目から涙を、ポロポロと溢しながら。
忠実な僕(しもべ)のように、僕の指示を仰ぐので……。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
32 / 62