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野良猫8
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エレベーターの扉が開くとそこはとても広く
黒を基調とした部屋が広がっていた。
奥は全てガラス張りになっており、日の光が気持ちよく入っていた。
真ん中にソファとテーブル、観葉植物があり、奥には一人分の書斎があるシンプルな作りだった。
「おかえり、シン。…おや、また野良を……それよりお前さん、勝手な行動は慎んどくれ。お蔭でサイが重症だよ。」
「あぁわかったよ爺さん、気をつけるっての」
面倒くさそうに手をひらひらとさせるシンジに対し、老人は舌打ちを聞こえるようにした。
「爺さんってのもやめとくれ。癇に障るよ」
シンジと話していた老人は、シンジと同じ黒のスーツを纏い、杖をつきながらゆっくり凛太郎の方へ向かう。切れた目付きをしていて、白髪の髪を揺らしていた。鼻が高く、薄い唇をしていて昔の美男子像が浮かび上がる。
凛太郎の羽織を暫く優しく撫でたあと、ぽつりと口を動かした。
「…お前さん、名前はなんてんだい?」
「凛太郎…です。」
「凛太郎、いい名だね。気に入ったよ。私は三十九(みとく)ってんだ。まぁ好きに呼んどくれよ。あぁでも、爺さんだけはやめとくれ。春臣は凛太郎を風呂へ連れて行きなさい、私はシンに言うことがたんまりあるんだ」
「はーい。さぁ凛ちゃん、行こっか」
春臣が部屋の隅にある扉へと向かい、扉が閉まるのを確認すると、三十九は大きなため息をうつ。
シンジはソファに深く腰掛けて座り、まだ癒えない肩をさする。
「……悪かったよ、また拾い物をしてきて」
「その通りだよ、面倒を見るのは私なんだからね。だけど私が今腹立ててるのはその事じゃないよ」
「なんだよ?俺何か他にやったか?」
「あの野良自体さ。相当厄介なのを拾って来ちまったみてぇだよ、お前さんは」
目を丸くするシンジに三十九はやれやれと
話を続ける。
「お前さんも見ただろ、あの朱色の羽織を。ありゃ桜庭家の物だよ。綺麗に洗えば袖の家紋もくっきり見えるだろう」
「桜庭って、ハルが居たって言う……」
「その通りだよ。ハルは詳しくは覚えちゃいないがね。あれから長い月日が経つから、思い出すのもそう遅くはないよ………全くお前さんって人は、いい拾い物しかしないねぇ」
俯きながら話していた三十九は長く間を置くと、書斎へ戻り、外を見つめながら誰にも聞こえないような小さな声で「私の死場に近づいた気がするよ」と、ぽつり呟いた。
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