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season #2
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カシャ。カシャカシャ。
「智~!」
雅範が弁当の袋を振り回しながら、走ってやってくる。
普通科校舎と特殊学科校舎の間の、木漏れ日差す中庭。
大きな木が真ん中に1本あり、テーブルと椅子がいくつか備え付けてある。
その一つに智と修が並んで座り、弁当を広げている。
「マー君、お弁当グシャグシャ!」
智が笑いながら手を振る。
「お前、おせぇーよ。てか、もっとゆっくり来いよ。」
修が智の隣で箸を振る。
「あれ?他の二人は?」
雅範がキョロキョロと辺りを見回す。
「ほら、ジュン君が走ってきた!」
智がニコニコしながら手を振っている。
「お待たせっ。」
淳一は座ろうとしていた雅範を押しのけて、智の隣に座る。
「ずりぃ~っ!俺が座ろうとしてたのに!」
「まぁまぁ。」
そう言いながらも、席を退く様子もなく、智の隣に腰掛ける。
仕方なく、雅範は智の前に座り、弁当を広げる。
「ねぇねぇ、カズは?」
雅範が箸を手に弁当の蓋を開けながら、聞くと、
近くでカシャカシャとシャッター音が耳をつく。
雅範が振り返ると、カメラを構える和哉が、雅範の目の前でシャッターを切る。
「うわぁっ!何?何?」
カメラを顔の前からどかし、ニヤニヤ笑うと、和哉は雅範の隣に腰掛ける。
「え?これ、カズの?」
雅範がしげしげとカメラを眺める。
「そうですよ。」
和哉は首からストラップを外し、真新しいカメラを大事そうにテーブルの上に置く。
「高いの?」
雅範が食べるのも忘れてカメラに見入る。
「溜めたお年玉、全部使いました。」
「え~っ?カズが?」
淳一が目を丸くして和哉を見る。
他の3人も一様に驚いている。
「お前が金使うなんて、雨降るな……。」
修が空を見上げて笑う。
「え~!雨じゃなくて槍だよ槍!」
雅範がおもしろそうに笑いながら、から揚げを口に運ぶ。
「それだけ、やりたかったってことだよね?」
智は嬉しそうにニコニコ笑いながら、おにぎりを頬張る。
「俺はまた、智と同じ校舎になりたくて、芸術科選択したのかと思ってたよ。」
淳一がニヤっと笑って、卵焼きを口に運ぶ。
和哉はフフンと鼻で笑いながら、弁当を取り出すと、
「淳一君、その頭、似合ってますよ。」
と笑った。
淳一は、ふんっとそっぽを向いて野球帽を取る。
端正な顔立ちに5分刈り頭が眩しい。
「どうした?お前が坊主なんて!」
修が驚いて、素っ頓狂な声をあげる。
淳一はふてくされたように弁当を摘んで口に運んでいく。
「野球部に入ったんですよ。」
和哉が笑いながら説明する。
「高校はやっぱ、甲子園でしょうって、野球部入ったんですよね?」
「……そうだよ。」
淳一はそっぽを向いたまま答える。
「で、高校球児は坊主ですから。」
和哉がクスクス笑う。
みんなびっくりして言葉が出ない。
「でも、ジュン君はさすがだね。坊主にしても、すっごくカッコいい!石膏像みたい。」
智がニッコリ、淳一に笑いかける。
淳一もチラッと智を見て、照れたように下を向いた。
「でも、なんで甲子園だったの?サッカーで花園でもよかったんじゃない?」
雅範が、ほぼ終わりかけの弁当のご飯粒を、丁寧に箸で集めながら淳一を見る。
「ばか!花園はラグビー。サッカーは国立。」
修は口をもぐもぐさせながら、雅範に突っ込む。
「あれ?そうだったっけ?ひゃっひゃっひゃっひゃ。」
雅範がごまかすように笑うと、淳一が口を開いた。
「いいだろ?野球がやりたかったんだから。俺にできないスポーツはない!」
淳一が言い放つと、和哉は溜め息をついて言い返す。
「野球はそんなに甘くありませんよ?経験、ありましたっけ?」
「ないけど……なんとかなる!」
淳一は真っ直ぐ智を見る。
「うん。ジュン君なら大丈夫。うふふ。野球も上手そう。」
智が笑いながら、ウィンナーをパクリと頬張る。
「俺も、野球やろっかな。」
ボソリと修がつぶやくと、みんなびっくりして修を見る。
「修、修君はサッカーが似合ってると思うよ。うん。」
智が困った顔で箸をくわえた。
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