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season #17
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「昨日……。」
智は和哉の言葉にビクッとする。
和哉はそんな智を見つめ、フフッと笑った。
「修ちゃんに何かされました?」
智は和哉から視線を逸らしたまま答える。
「……何も……。」
智は昨日のことを思い出す。
結局、何もされなかった……。
「……じゃ、智の問題だ。」
「……。」
智は下を向いて、足早に通り過ぎようとする。
和哉はそれに並んで歩く。
カメラを構え、早足のせいで揺れる体を整えながら、
ファインダーを覗く。
「気づいちゃいました?自分の気持ち。」
智が、え?と和哉の方に顔を向ける。
和哉はすかさずシャッターを押す。
そして、ゆっくりとカメラを下ろした。
「図星ですか。」
智は、怪しむように和哉を見つめる。
「……どうして?」
「そりゃ、わかりますよ。ずっと智を見てきたんですから。」
智はしばらく和哉の顔を見つめ、ハァーと溜め息をついた。
「カズに隠し事はできないね……。」
そう言って、顔を空に向ける。
まだ明るい空も、東の空からだんだんと群青色の影が濃くなっている。
「……そうだよ。……気づいちゃった。」
智が眉を下げて、無理に笑顔を作る。
「気づいて、どうしてその顔なんですか?」
智は和哉の言葉にびっくりして眉を上げる。
「だって……修君、彼女いるし……。」
「そんなこと?」
和哉はクックと笑って、智を優しく見つめる。
「いいじゃないですか。彼女がいたって。世の中どのくらいの人が
片思いだと思ってるんです?両思いの方が少ないに決まってる。」
「でも……、おいら、男だし……。」
アヒル口で下を向く智に、また和哉は笑いながらシャッターを押す。
「だから?」
「え?……だから……ダメだよね?」
「どうして?」
和哉は驚く智が可愛くて、クスクス笑い続ける。
「どうしてって……普通じゃない……だろ?」
「普通って?」
「……普通に女の子と恋して……普通に結婚して……。」
智は、言ってるうちにどんどん悲しくなってくる。
「いいじゃないですか。男同士だって。どうしてダメなんですか?」
「…………。」
「私達にとって、結婚なんてまだまだ先の話だし……。」
和哉は智の顔をじっと見る。
「修ちゃんが、そんなことに拘るとは思えませんしね。」
「そうかな……。」
智の視線が下がっていく。
「そうですよ。」
和哉は智の両肩を引き寄せて、頬に唇を当てる。
「少なくとも、私は気にしませんけどね。」
和哉が極上の笑顔で智を見つめる。
「カズ……。」
智は和哉を抱きしめる。
「ありがとう。」
和哉はフフッと笑って、智の背中をポンポン叩いた。
「もしダメだったら、いっぱい泣けばいいんです。
私の胸、貸しますから。そして、新しい恋をまたすればいいんです。」
「カズ……大好き。」
智は和哉の背中をギュッと握り締める。
和哉はなんだかくすぐったくて、クスクス笑う。
「振られるの、待ってますよ。」
智は顔を上げて、口を尖らせる。
「カズ~~っ。」
「あはははは。」
和哉は智の両脇をくすぐると、すばやく智の腕から離れる。
「カズの意地悪~!」
智が和哉の後を追いかけた。
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