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season #33
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淳一は部活が終わると、急いで着替えた。
今日は見たいテレビがある。
録画できれば急ぐ必要もないのに、録画は姉が占領している。
5人組のアイドルグループに夢中になっていて、ほぼすべての番組を録画し、
HDもいっぱいなら、常に何かを録画しているので、淳一の入る隙がない。
なんとか時間までに帰らないと、連続ドラマの途中が抜けてしまう。
前回は主人公とヒロインがキスしそうになって終わっていた。
淳一は今回の放送を見逃すわけにはいかなかった。
着替えが終わると鞄を掴んで、勢いよく部室のドアを開ける。
そのまま校門の方へ走っていく。
勢いよく走りすぎたのか、途中で鞄から帽子がこぼれ落ちた。
仕方なく引き返し、帽子を拾う。
ポンポンと軽く叩き、丁寧に鞄にねじ込むと、部室棟の端っこで、人影が動いた。
気になった淳一がそっと近づいていくと、人影の一人は修だとわかった。
「修ちゃん……?」
どうしたんだろうとさらに近づくと、修が一人でないことがわかる。
「あ……。」
声が出そうになって、淳一は両手で口を押さえた。
修が、ドラマさながらにキスシーンを演じている。
相手の顔はよくわからない。
濃厚なキスシーンに、思わず顔が火照ってくる。
淳一は音を立てないようにその場から離れると、門に向って走り出した。
次の日、淳一は休み時間に修を探した。
友達と話している修を見つけると、
「ちょっといい?」
そう言って修を連れ出す。
修は、なんだよ?と顔をしかめながらも付いて来る。
「昨日のあれ、誰?」
淳一が鋭い視線で修を見つめる。
「昨日?」
淳一がうなずく。
「何かあったっけ?」
修が首を捻るので、淳一は溜め息をついて話し出す。
「昨日の部活の帰り、修ちゃんを見たよ。」
「部活の帰り?」
「うん。」
「なんだよ。声かけてくれればよかったのに。」
「声かけられるような雰囲気じゃなかったんだよ。」
「……え?」
何を言われてるのか、やっとわかった修はバツが悪そうに下を向く。
「付き合ってるの?」
修は淳一から視線を外して答える。
「付き合ってるわけじゃないよ……。」
淳一はまた、溜め息をついて修を見る。
「修ちゃん、好きな人、いるよね?」
「……いるよ。」
修はおもしろくなさそうに、チラッと淳一を見る。
「いいの?それで?」
「……いいんだよ。お前に関係ないだろ?」
「関係ないわけないじゃん。」
「どうして?」
「どうして?じゃ、俺が智はもらうから!」
「なんだよ、それ!」
「なんだよじゃないよ!」
淳一は修の胸倉を掴む。
「絶対智に知られんなよ?」
淳一の言葉に修は驚いた。
元々、智にだけは隠したいと思っていた。
それを淳一に言われるとは……。
「絶対だかんな!」
スポーツ刈りの淳一は、昔よりさらに凄みを増している。
目力も半端じゃない。
気おされて、修は小さくうなずいた。
修を掴んでいた手を離し、淳一はポツリとつぶやいた。
「なんなんだよ……。」
淳一は頭(かぶり)を振って、もう一度修を見る。
「修ちゃんは智を悲しませたいの?」
修は淳一を見ると、ポケットに手を突っ込んだ。
「………悲しませないためだよ……。」
そう言う修の顔はひどく悲しそうだった。
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