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season #35
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和哉が急いで帰り支度をしていると、女の子が二人、声を掛けてきた。
「西沢君、写真なんだけど……。」
和哉はニッコリ笑って女の子達を階段の踊り場へ連れて行く。
「誰がいいの?」
和哉が鞄から冊子を取り出すと、
「私、松田君!」
「斉藤君の新しいのは?」
女の子達は奪うように冊子を開く。
「う~ん、あったかな?見てみて。」
和哉は時間を気にしながらも、仕方なく二人が選ぶのを待った。
「あ、この写真!これ欲しいっ!」
「これ!チョー可愛い♪」
二人がキャッキャと選んでいると、和哉が横から声を掛ける。
「ねぇ、二人とも中学の時も買ってた?」
「……うん。」
二人は顔を見合わせて、申し訳なさそうに下を向く。
「ああ、私は気にしないから。大丈夫。」
和哉がにこやかに笑う。
二人も安心したのか、笑顔を浮かべて和哉を見る。
「最近は?そっちからは買ってないの?」
二人は顔を見合わせる。
「買ってないよね……?」
「うん……それにあの写真、偏ってたし。」
「偏ってた?」
「うん。小野寺君の写真はすっごく少なかったし、松田君の写真もね?」
「うん。少なかった。」
「ふうん。ジュン君の写真、少なかったんだ?」
「うん。誰かと映ってる写真とか、あんまり写りのよくない写真はあったんだけど、
西沢君のみたいないい写真はほとんどなかったな。」
「それで言ったら写真の写りはこっちの方が断然いい!」
二人は笑いながら、交互にうなずいた。
「ありがとうございます。」
和哉はふざけて頭を下げる。
「やだ。じゃ、これとこれと……これ。」
「私はこの松田君!あ……こっちも。」
「じゃ、これはおまけしとくね?まいどあり。」
和哉は淳一と修、二人が写った写真を一枚指差しニコッと笑うと、
女の子達の注文を次々メモしていった。
部活が終わった智は校門に向っていた。
今日は和哉と待ち合わせだ。
和哉はいつも早く来る。
智も早足で昇降口を出る。
「小野寺君。」
呼び止められて振り向くと、にこやかな笑みを浮かべて、
男子生徒が智に近づいてきた。
「今日は一人?」
「ううん。校門で待ち合わせ。」
智もニッコリ微笑んで、校門へ向って歩き出す。
「そっか……。なかなか小野寺君と話す時間ってないんだね。」
「そんなことないよ。いつでも話くらいできるよ。」
智が眉間に皺を寄せて男子生徒を見ると、男子生徒はクスクス笑う。
「小野寺君、優しいね。ありがとう。」
「それに誰かがいたって、話しかけて?」
「うん。……あ、小野寺君、いい匂い。」
男子生徒が智の方に鼻を突き出す。
「匂い?」
智は自分の腕の匂いを嗅いでみる。
「うん。シャンプーかな?」
今度は自分の髪を鼻先に引っ張るが、ギリギリで匂いが嗅げない。
「匂う?」
智は首に手をやって、少し傾げる。
「んふふ。いい匂いだよ。」
男子生徒は智の首筋をじっと見ると、同じように首を傾げた。
「どこのシャンプーか聞きたいくらい。」
「え?母ちゃんが買ってくる普通の……。」
「普通の?」
「うん。」
智がニッコリ笑うと、男子生徒もニッコリ笑った。
男子生徒は何気なく自分の時計を見て、ハッとする。
「ごめん。急がないといけないの、忘れてた!」
「うふふ。じゃ、急がないと!」
「うん。また今度!」
手を振って走っていく後ろ姿を見て、智はポツリとつぶやいた。
「名前……いつ聞けばいいんだろう?」
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